仮想通貨のスケーラビリティ問題とは

スケーラビリティ(scalability)とは、利用者やシステムが拡大するにしたがって適応できる能力や度合いのことを意味します。

スケーラビリティの語源は「スケール(拡張、拡大)する」という意味ですが、仮想通貨市場においては今後ビットコインやイーサリアムなどの利用者が増えることによってシステムが耐えれるか、利便性が落ちないかという度合いを指しています。


仮想通貨の利用者が増えることによって具体的には以下のような問題が発生しやすくなります。そして、それらがスケーラビリティの問題と言われる事項です

スケーラビリティ問題
  • 仮想通貨の送金時間が遅くなる
  • 仮想通貨の送金コストが高くなる
  • 地球環境への悪影響が進む
  • コンピュータ価格が高騰する

仮想通貨の送金時間が遅くなる

ブロックチェーン構造

ビットコインには誰かにビットコインを送金するたびに送金データをブロックに格納していく仕組みがあります。ブロックは送金データが蓄積するたびに鎖(チェーン)のように連なって増えていくため、ビットコインの送金データ(取引履歴)を「ブロックチェーン」と呼んでいます。

ビットコインの取引データを格納するブロックは、1ブロックに対して「1MB」の量のデータしか格納する事ができません。1つのブロックを生成するために約10分間かかるため、10分間で6MB分の取引データが発生した場合では取引処理に最低1時間はかかるという仕組みになります。


世界中のビットコイン保有者が一度に取引しようとすると膨大な取引処理をする必要がでてくるため、取引完了までの時間は利用者が多ければ多いほど長くなります。2017年12月から2018年1月では史上最高の取引量が発生し、ビットコインを送金してから4日、5日間送金の取引が完了しなかったという報告も多数あります。

今後ビットコインを利用する人が急速に増えた場合、もっと大きな送金遅延が発生することは確実とされており、この送金遅延問題がスケーラビリティの問題となっています。


仮想通貨の送金コストが高くなる

ビットコイン取引の仕組みでは、送金時に支払う送金手数料(ハガキで言えば切手代みたいなもの)を高く設定することで比較的早く取引を完了させることができます。

利用者が増えてスケーラビリティが拡大していくにつれて、ビットコインでは送金競争が起こりやすくなります。競争が起こると送金手数料は高く設定されやすくなり、送金コストが高くなるという現象が起こってしまいます。2017年12月にビットコイン市場が急騰した結果、日本の仮想通貨取引所は送金時間を短縮するために、送金手数料を一時的に引き上げる結果となりました。

ビットコイン利用者が増大するに従って、仮想通貨取引所では利便性を維持するために送金手数料をあげる手段が使われてしまいます。500円の飲食代を支払うために送金手数料が3,000円もかかるという事態も発生し、ビットコインは利用者が増えれば増えるほど使いづらくなるというスケーラビリティの問題が発覚しました。


地球環境への悪影響が進む

仮想通貨全部ではなくビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨に限って言えば、マイニングで大量のコンピュータと電気を使わなければいけません。

マイニングが盛んな中国では火力発電所で作られた電気を採用しています。マイニングに供給される電気がすべて風力や太陽光などの再生可能エネルギーであれば、環境への影響は少ないのですが、原子力発電所などのエネルギーを使っているため、今後マイニング市場が大きくなっていくと必要な電気エネルギー量も増えていきます。大量の電力を供給するために、大規模なCO2の排出やプルトニュウムなどの汚染物質のゴミ処理が加速する影響もあり、マイニングを使った仮想通貨は拡大するにつれて環境への影響も無視できなくなっています。


コンピュータ価格が高騰する

マイニングをするコンピュータは一般的なコンピュータよりも高性能です。マイニング専用のコンピュータASICチップが開発され計算処理性能の高さは一般のコンピュータと比較になりません。

中国を中心に世界中のマイナー(ビットコインをマイニングする方々)がASICチップを欲しがるため、制作するために必要な部品の値段は高騰します。さらにコンピュータチップはスマートフォンから宇宙ロケットなどさまざな製品に組み込まれているため、コンピュータチップを必要とする商品の価格が上昇する可能性もあります。


スケーラビリティ問題の解決する仮想通貨

Segwitが導入された仮想通貨

Segwit(セグウィット)とは取引データを圧縮する技術です。ビットコインやモナコインがSegwitを導入しており、1ブロックに格納できるデータ量を増やすことに成功しています。詳しくは過去記事「Segwitとは?ビットコインやモナコインの歴史【仮想通貨用語】」をご覧ください


サイドチェーンが導入された仮想通貨

サイドチェーン

サイドチェーンとは、メインのブロックチェーンから派生するブロックチェーンのことを意味します。メインのブロックチェーンから違うチェーンを派生させることにより、メインチェーンの取引処理を代替したり、メインチェーンの欠陥を補完することが可能となります。

サイドチェーンを採用している代表的なブロジェクトとして、loom NetworkLiskが挙げられますが、サイドチェーンも仮想通貨市場同様に将来性のある技術です。

イーサリアムの創始者ヴィタリク氏もサイドチェーンの技術には注目しており、Plasma(ブラズマ)チェーンとよばれる無数のTree状のチェーンを作ることで、スケーラビリティの問題を解決するブロジェクトを進めています。