仮想通貨投資が危険な理由
2009年に1円以下で売買されていたBitcoin(ビットコイン)が十数年間で数百万倍の価値に化けたことにより、仮想通貨投資をする人は熱狂的で、やらない人は「仮想通貨は何か危険だ」「きっと怪しいに違いない」と考える人も多いと思います。
今回は実際に仮想通貨投資をしている私が投資家目線で仮想通貨の危険性について説明をしていきます。
投資をされている方もそうで無い方も「仮想通貨投資の危険性」より正しく理解頂けたら、嬉しいです。
24時間相場が動いて価格変動も激しい
仮想通貨投資の最も代表的なリスクは価格変動が激しいことです。
出典:coinglass月間のビットコイン価格の変動率を見ると、1ヶ月間で20%、30%の価格が動くことは珍しくありません。
【最も大きく動いた月】
2013年11月:+449.35%
2013年3月:+172.76%
2017年8月:+65.32%
【最も下落幅が大きかった月】
2022年6月:-37.28%
2018年11月:-36.57%
2021年3月:-35.31%
株式や債券などの投資をしている方であれば、たった1ヶ月で30%、40%の利益を取れることなどはほとんどありえませんし、ましてや単月で資産価値が20%、30%減ることも珍しいかと思います。仮想通貨投資では他の投資で1年や数年かかるような値動きが毎月起こっているのが実情です。
加えて、仮想通貨投資では時間の区切りがなく、24時間365日ずっと価格が動き続けます。
株式投資や債券、為替などの投資は時間が決まっているので、急な価格変動が起きた場合でもある程度対処や投資判断を下すまでの猶予があります。
しかし、仮想通貨は土日だろうが、年末年始だろうが、関係なく常にリアルタイムで動き続けます。仕事中、育児中、睡眠中であっても一瞬の投資判断が天国行き(もしくは地獄行き)になりますので、そこが仮想通貨がハイリスク・ハイリターンな投資である理由と言えます。
海外ではレバレッジ100倍設定が可能
日本で仮想通貨投資をする場合、設定可能なレバレッジ倍率は2倍です。
【レバレッジとは】
レバレッジとは、信用取引といって設定された倍率分だけ借金をして取引をする行為です。
たとえば、50万円で買い注文を入れた後1%の値動きがあれば、5,000円から手数料を引いた分が投資家の利益となります。
この取引にレバレッジ2倍を設定していれば、50万円を使って100万円分の買い注文を入れることが出来ます。その後1%の値動きがあれば、1万円から手数料を引いた分が投資家の利益となり、レバレッジを使わなかった場合に比べると2倍近くの利益を得ることになります(手数料は若干割高です)。
ただし、値動きがマイナスになるとマイナス幅も2倍になります。
海外の仮想通貨取引所では、レバレッジ倍率を100倍まで設定できる取引所が存在します。
出典:bybit倍率100倍のレバレッジを使えば「予想が当たれば」少ない金額で大きな利益を出すことが出来ますが、予想が外れれば、地獄行きです。
投資初心者や余裕資金が少ない人が手を出す代物ではありません。
これは触らない方が賢明です。
価値がゼロになるコインが無数に存在
投資家が熱狂したマイナーコイン(まだ多くの人に知られていない時価総額は低い仮想通貨)ほど価値がゼロになる可能性があります。
最近の例で最もわかりやすかったのがイケハヤ氏がSNSで広めていたIRONという仮想通貨です。
ブロックチェーン、仮想通貨に関心があって、 $IRON に興奮してない人はほんとモグリぜよ。
— 🍺 ikehaya (@IHayato) June 8, 2021
あまり話題になってないのが不思議。バブル崩壊してみんな消えてしまった……?
とはいえ、バブル崩壊したから伸びてる銘柄なんですよね。
焦土の中から激ヤバステーブルコインというキラーアプリが爆誕!
IRONという仮想通貨は2021年6月に2週間で価格が約38倍に膨れ上がりましたが、その後1日かからずに価値がゼロへと近づきます。

価格は2022年7月時点で1RON = 0.000008044円程度で取引されており、おそらく今後価格が戻ることはないと思います。
このような仮想通貨は無数にありますし、Bitcoinやイーサリアムのような長期間価格が上がり続ける仮想通貨の方が珍しいぐらいです。
仮想通貨投資をするのであれば、メジャーコイン以外は相当危険な取引になることを理解しておくべきです。
仮想通貨取引所から通貨が盗まれる
仮想通貨は金融庁から認可された取引所に資産を預けたとしても悪意のあるハッカーによって資産を盗まれるリスクがあります。
近年最も大きな取引所の事件は2014年に起きたマウントゴックスと2018年に起きたコインチェックです。
どちらも日本の仮想通貨取引所ですが、巨額の顧客資産が盗み出されています。
盗まれた資産はコインチェックの場合は被害時点での資産価格と同等の現金で顧客資産を補填しており、マウントゴックスは2022年7月時点で債権者への弁済に近づいているとニュースになっています。
今後も取引所がハッキングによって資産を強奪されてしまうリスクはありますが、取引所が顧客資産を補填する傾向も強いため、以前に比べればセキュリティレベルは格段に上がっていますが、それでもリスクはゼロではないという理解が必要です。
秘密鍵を忘れたら資産を取り出せない
仮想通貨取引所から資産が盗まれるリスクを抑えるためには、個人(ハードウォレット)で仮想通貨を管理する方法があります。
その場合は、送金時に利用する秘密鍵とリカバリーキーを無くしてしまうと、資産を一生取り出せなくなってしまうリスクが発生します。
個人で仮想通貨を保管する場合には秘密鍵を紙媒体や複数のハードウォレットなどに残して保管するなど、絶対に無くさない工夫が必要になります。
仮想通貨は保管が難しく、管理が手間です。
誤って送金すると仮想通貨を失う
仮想通貨を他の取引所や自分のウォレットへ送金する際、指定のアドレスを1文字でも間違えて送金すると、送金された仮想通貨が取り戻せなくなることがあります。
仮想通貨の種類によってはメッセージを付けずに送金したり、仕様を間違えてしまうと資産を無くしてしまいます。
この現象をマウントゴックスで資産をなくした事にちなんで「セルフゴックス」と言います。
セルフゴックスとは、送金ミスで資産を無くしたり、秘密鍵紛失で資産を取り出せなくなったりすることを意味します。
数百円や数千円のミスであれば許せますが、数千万円、数億円などの送金ミスがあると悔やんでも悔やみきれませんよね。
仮想通貨決済で課税が発生する
2022年7月時点での日本の仮想通貨に関する税制では、仮想通貨の値上がり益がある時点で仮想通貨を使って商品を購入すると、仮想通貨を現金化するのと同様に決済した金額と値上がり率に応じて税金が課税される仕組みになっています。
たとえば、1万円で仮想通貨を購入後、仮想通貨の価値が2万円になったとします。その後、2万円分の仮想通貨で服を購入した場合、1万円分の利益に対して15%〜55%の税率(他の所得状況で変わります)が課税されます。
納税するためには1年に1回行われる確定申告で提出します。その際、年間の仮想通貨取引履歴を保管しておく必要がありますし、計算ソフトを使って課税額を計算する必要があるので、慣れなければ結構手間です。
仮想通貨の交換で課税が発生する
仮想通貨は決済や現金化した時だけでなく、仮想通貨同士を交換した時も課税の対象となります。
たとえば、1万円分のBitcoinを購入後、Bitcoinの価値が2万円になったとします。その後、2万円分のBitcoinを使って2万円分のイーサリアムを購入すると、1万円の利益に対して15%~55%の税率(他の所得状況で変わります)が課税されます。
これを知らずに数百万円や数千万円の利益を確定させてしまうと、翌年思いがけない金額を税金で支払わなければいけなくなります。
さらに最悪なのは、交換した先の仮想通貨が暴落している場合です。その場合は手元に資産が無いにも関わらず、多額の税金支払いだけが残ります。
最大税率が55%と高い
仮想通貨の税金は他の総合課税となる収入を含めた合計金額が195万円以下であれば15%で済みますし、年収400万円の方が仮想通貨で年間100万円の利益を出した場合は30%(控除額42万円)の税金が課税されることになります。
出典:国税庁年収や副業収入と併せて仮想通貨の利益が4,000万円以上となると、住民税10%と併せて税率は55%(控除額479万円)まで上昇します。
Bitcoinやイーサリアムを初期から保有されていたり、時価総額の小さい草コインの急激な上昇に参加出来た仮想通貨投資家は数千万円の利益を確定させた場合、最大55%の税金を取られることになり、翌年の税金を納めるために十分な貯金が必要となります。
株式と税金を比較しても結構高いので、高い利益を狙う場合は注意が必要です。
仮想通貨関連の詐欺が蔓延している
Bitcoinを始めとして急激な価格上昇が狙える仮想通貨投資は「億り人」という言葉を流行らせるほど、儲かるイメージが蔓延したことがキッカケとなり、詐欺や犯罪に利用されるケースが増えています。
国民生活センターに寄せられる暗号資産(仮想通貨)の相談件数の推移を見ても、それは明らかです。
【暗号資産の相談件数】
2014年:77件
2015年:447件
2016年:615件
2017年:2,167件
2018年:3,455件
2019年:2,802件
2020年:3,344件
2021年:4,662件
中でも恐ろしいのが「ポンジスキーム」という手口で、被害額が大きく、いつの時代でもなくならない詐欺手法になります。
投資詐欺が怖いのは時代に合わせた儲かりそうな話(仮想通貨、太陽光発電、海外リゾート開発など)を作れること、即返金で高利回りだと勘違いさせることです。
— Gaz(ガズ)@ブログ更新中 (@gazooblog) July 23, 2022
信じさせる手法が巧妙化しており、どの時代でも無くなりません。加えて詐欺師は投資をしてないので被害者から奪った金のほとんどが利益。 pic.twitter.com/3L4W4KvO28
この手の詐欺にひっかからないよう知識をつける必要があります。
国が仮想通貨を禁止するリスクがある
仮想通貨のリスクは国単位で及ぶことがあります。
実際、中国は2017年9月にICO(仮想通貨での資金調達)の全面禁止、2021年5月にはマイニングを含めた仮想通貨事業の禁止、2021年9月24日にも仮想通貨の関連サービスを全面的に禁止することを発表しています。
国が仮想通貨を禁止することによって、その国のお金が仮想通貨市場に流れにくくなるため、市場が停滞するリスクがあります。
基本的に自国建の通貨を保有する国にとって、仮想通貨は脅威です。
自国通貨が利用されなければ、国の経済が小さくなる懸念や政治的な交渉もやりにくくなるからです。
最近ではエルサルバドルのようにビットコインを法定通貨として認める国も出てきていますが、法定通貨が強い国と弱い国とで考え方が違うため、世界がどのように動いていくのかを注意して見ておく必要はあります。
米国や中国などの大きな経済圏で仮想通貨を不自由なく扱える規制が進めば未来は明るいですが、そうでなければシュリンクしていく可能性もあります。
51%攻撃が起きれば不正送金が出来る
51%攻撃とは、マイニングのハッシュレートを51%以上を占めた場合に起こりうる不正取引承認のことを意味します。
実際に起こすのはかなり難しいことですが、1つの悪意ある組織が仮想通貨取引の承認権限を独占出来れば、不正に残高を増やしたり、送金を止めたりすることが可能です。
ただ、それが横行すれば仮想通貨の価値も暴落するため、仮想通貨を大量に保有しているようなマイニングファームや仮想通貨に関連する利害関係者が膨大な時間とお金をかけて自分の資産を減らす行為を実行する可能性は低いと思われています。
フェイクニュースが多い
仮想通貨投資自体があまり理解されていないせいか、嘘やフェイクニュースが一人歩きする場面も結構あります。
「◯◯コインは必ず儲かる!」「日本の仮想通貨取引所は整備が遅れている!危険だ!」など事実とは異なる情報が真実として広まっていくことは仮想通貨界隈では日常茶飯事です。
米国の大手金融企業であるJPモルガンの社長は2017年に「ビットコインは詐欺だ」「取引した社員は全員解雇する」と主張していたのに、数年後は「ビットコインは爆上げする」と言ってました。
JPモルガンがビットコインは14万6000ドルになると予想🔽
— Gaz(ガズ)@ブログ更新中 (@gazooblog) January 5, 2021
3年前はCEOのジェームズ・ダイモン氏が「ビットコインは詐欺だ」と主張してたと思うし、14万ドル到着がいつ時点か不透明なので、この手価格予想ニュースは無視で良いと思います。大事なのはそこじゃない。https://t.co/JjXJXlqphf
界隈では「Bitcoinの価格は1,000万円以上になる」と言われたりしますが、それも根拠が不明です。
仮に試算が正しかったとしても、未来を予想することはできません。
事実と期待が混在した情報が真実として出回る世界なので、全ての情報を鵜呑みにしてしまうと危険です。
しかも仮想通貨界隈の技術革新のスピードはかなり早く、数日前の情報が既に古くなっていたりもしますので、時間と共に何が正しいかも変わる世界です。今後も注意深く情報を見ていかないと追いつけません。
まとめ
長々と読んで頂き、ありがとうございます。
仮想通貨投資が危険な理由をまとめると、以下の通りです。

仮想通貨投資を始める際、参考にして頂ければ幸いです。