資金決済法



資金決済法とは

資金決済法とは、銀行や証券以外の金融業を取り締まる法律。

日本国内で金融ビジネスを詐欺に利用するケースが多々発生しているため、金融庁の認可なくビジネスをしている組織や顧客に損害を与えている企業を取り締まるために制定された法律が資金決済法です。

    銀行や証券業 → 金融商品取引法を遵守しなければならない。
    銀行や証券以外のビジネス → 資金決済法を遵守しなければならない。

資金決済法とは不正を防ぐ法律

資金決済法は商品券や電子マネーを発行する企業や銀行以外の為替取引を行う組織を金融庁が監督するための法律です。

資金決済法がある現在においても仮想通貨詐欺や不正な金融資産の送金が横行しているため、それらの犯罪を取り締まるための法律と捉えるのが正しい資金決済法の考え方です。


資金決済法のポイント

資金決済法の全容については以下のe-Govサイトにて確認することができます。

外部リンク:資金決済に関する法律

法律内容を一言一句確認するのはかなり労力がいるため、このブログで資金決済法のポイントを簡単に解説していきます。


資金決済法の法律内容を大きく分けると以下の4つに分類することができます。

    1.前払式支払手段
    2.資金移動
    3.仮想通貨
    4.資金清算

上記4つの法律はそれぞれサービスの業態によって区分されているとお考えください。


前払式支払手段

前払式支払手段とは、Suicaのような電子マネーやJCBギフトカードのような商品券サービスのことを意味します。

前払式支払手段の定義は以下の通りです。

  • 現金と等価交換で発行される
  • 使用期限が設定されていない

前払式支払手段では、その名の通り顧客から受け取った現金と同じ量の電子マネー(もしくは商品券など)しか発行することができない決まりです。

たとえば前払式支払手段が使われているSuicaでは、必ず現金をチャージして利用する仕組みです。

Suicaを発行するJR東日本が顧客によって受け取った現金の量と同等の電子マネーを管理していることになります。


ここで重要なのは前払式手段では、顧客から受け取った現金以上の金額を発行することはできないということです。

現金を自由に発行できるのは日本銀行のみです。

日本銀行以外の組織が勝手に金融資産のような電子マネーや商品券を自由に発行することはできるはずがありません。


そして前払式支払手段で提供されるものには使用期限が設定されていません。

使用期限が設定されている映画のチケットや旅行券などは前払式支払手段には該当しないということになります。


資金決済法には上記のような前払式支払手段で提供されるサービスを運営する組織に関しての決まりごとや罰則などが定められています。


資金移動業

資金移動業とはコンビニのATMやクレジットカード決済など銀行以外の組織が為替取引(隔他者間同士の貸借)をすることを意味します。

資金移動業は100万円以下の取引に限定され、手数料は銀行よりも安く設定されている場合がほとんどです。


私たちがよく利用している資金移動サービスとして「LINE PAY」を想像していただけるとわかりやすいかもしれません。

資金移動サービスは24時間いつでも利用可能で、銀行以外の店舗やアミューズメント施設で決済として利用することが可能です。


このような資金移動サービスを提供する企業を監視する内容が資金決済法には明記されています。


仮想通貨交換業

仮想通貨交換業はビットフライヤーやコインチェックなど仮想通貨取引所や仮想通貨を使った事業を意味します。

仮想通貨に関する内容は資金決済法の中で最も新しく追加された項目となっており、仮想通貨交換業者の運営体制や顧客保護を優先させるための指導を行う内容が明記されています。


2018年に日本の仮想通貨取引所が大きな事件を起こしたことがきっかけとなり、資金決済法を作成した金融庁が何度も仮想通貨交換業者への立ち入り調査、監督指導を行うことによって日本の仮想通貨交換業者の強固な体制が構築されつつあります。


資金清算業

資金清算業とは銀行間の債務を負担、清算するためのサービスで、日本では唯一「一般社団法人全国銀行資金決済ネットワーク」だけが資金清算業として金融庁から登録を受けています。

一般社団法人全国銀行資金決済ネットワークは、金融機関同士の為替取引をオンライン上で処理する全銀システムを運営しています。

これらの組織を監督する内容が資金決済法に明記されています。


資金決済法の改正

資金決済法が施行される前は日本の為替取引が銀行の独占業務となっていたことが批判さていた時代です。

2010年4月1日に資金決済法が施行されたことにより、銀行業以外でも為替取引が扱えることとなりました。


その後仮想通貨などの情報技術の発展に伴い、2017年4月には仮想通貨交換業者の登録制度を導入した法改正が実行されました。

資金決済法の改正により、2017年以降日本では大きな仮想通貨ブームが起きています。


資金決済法で定義する仮想通貨

仮想通貨の定義は「資金決済法第2条第5項」に明記されています。

この法律において「仮想通貨」とは、次に掲げるものをいう。

1:物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

2:不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

要約するれば仮想通貨とは仮想通貨取引所に上場している通貨のことを意味します。

仮想通貨の特徴としてインターネット上で不特定多数と交換や売買ができるもの、かつ財産的価値があるものです。


Suicaなどの電子マネーや企業が発行するポイントもは不特定多数と売買することができないため、仮想通貨には該当しません

商品券やギフトカードについては電子的に交換することができないので、これらも仮想通貨には該当しません。

仮想通貨の定義(簡単まとめ)
  • 不特定多数の人々とインターネットを使って交換、売買できる
  • 財産的価値がある

資金決済法のガイドライン

資金決済法に明記されている仮想通貨に関する規制ポイントを簡潔に説明します。


仮想通貨交換業者は登録制

日本で仮想通貨を取り扱う場合、必ず金融庁による認可が必要となり仮想通貨交換業の許可を受けていない事業者はいかなる場合においても仮想通貨を取り扱うことができません。


無登録で仮想通貨交換業を行う組織に関しては金融庁より警告が入ります。

過去日本人向けにICOへの勧誘を行なった組織が金融庁が警告を行いました。

外部リンク:【金融庁】無登録で仮想通貨交換業を行う者について(Blockchain Laboratory Limited)

金融庁の許可を受けずに仮想通貨交換業を提供する組織は怪しさしかありません。

詐欺のようなビジネスを展開していたり、顧客資産を持ち逃げするなどの被害にあう可能性が高いため、仮想通貨サービスを利用する場合は金融庁のサイトにて登録許可があるかどうかを確認しておきましょう。

外部リンク:【金融庁】仮想通貨交換業者登録一覧

高いセキュリティを維持する義務

仮想通貨交換業を適正かつ確実に遂行する体制が整備されていない場合、仮想通貨交換業の登録を拒否しなければならない」という記載が資金決済法第63条5項にあります。


金融庁は仮想通貨交換業者の定期報告を確認や立入検査などによって、コンプライアンスや管理体制などが不十分であると判断した場合、仮想通貨交換業者に業務改善命令を出すことが可能です。

対応しない場合は仮想通貨交換業登録の剥奪ができるため、仮想通貨交換業者を利用する顧客は安心して取引所を利用することができるということになります。


顧客資産を分別する義務

仮想通貨交換業者は顧客資産(金銭と仮想通貨)を自己資産と分別して管理する必要があります。

資金決済法第63条11項に明記されている通り、公認会計士や監査法人の監査により顧客資産の分別管理が義務付けられるため、経営や設備投資等の資金として顧客資産を利用することができません。


顧客から預かった資産は顧客の許可なく運用することは不可能な仕組みとなっています。

万が一、顧客資産を仮想通貨交換業者が勝手に資産運用した場合は法律違反となります。


お客様センターを設置する義務

仮想通貨交換業を運営する場合、必ず顧客からの苦情や紛争解決措置として電話連絡先や問い合わせセンターを設置する必要があります。


仮想通貨交換業で問い合わせセンターや電話番号が明記されていない事業者はいません。

仮想通貨取引所を利用する際は、問い合わせ先などがあるかを確認しておくことが重要です。


手数料を明示する義務

仮想通貨交換業者は法定通貨である日本円や外貨と区別するための説明や、手数料など契約内容を説明する義務があります。

各仮想通貨取引所のホームページを確認すれば、取引手数料や入出金手数料はもちろんのこと、レバレッジ手数料なども明記されています。


個人的に明記してほしいと思うのが、スプレッド(売値と買値の価格差)です。

スプレッドは見えない手数料とも言われており、ここまで明記する取引所はありません。


仮想通貨交換業のガイドラインまとめ

日本の仮想通貨交換業が守らなければいけないことは以下の通りです。

仮想通貨交換業のガイドラインまとめ
  • 金融庁の認可を受けている事業者のみ運営できる。
  • 高いセキュリティを維持しなければならない。
  • 顧客資産を分別する義務がある。
  • お客様センターを設置する義務がある。
  • 手数料を明示する義務がある。

万が一1つでも守られていない事業者サービスは、顧客として即利用するのをやめましょう。


これから仮想通貨取引所を利用される場合は、以下の記事を参考にしてみてください。

関連記事:【2019年最新版】日本のおすすめ仮想通貨取引所ランキング

前払式支払手段の仮想通貨

資金決済法をよく理解すると、仮想通貨交換業を取得せずともブロックチェーンの技術を使って仮想通貨のような仕組みを構築することが可能です。


ステーブルコイン「LCNEM」

前払式支払手段を使うLCNEMという日本発の仮想通貨ブロジェクトがあります。

LCNEMはNEMのモザイクという機能を使って作られた仮想通貨ですが、金融庁が定める仮想通貨の定義には当てはまらないため、仮想通貨交換業の登録がなくても運営することが可能です。


LCNEMの特徴
  • 日本円とLCNEMとの価値が1対1
  • LCNEMから日本円に換金不可能
  • kyashやアマゾンギフト券に換金できる

LCNEMは日本円で購入後、LCNEMを日本円に換金(出金)することができません。

LCNEMは同等の価値のあるkyashやアマゾンギフト券に換金可能にすることで、LCNEMの価値を保つという仕組みです。

外部リンク:【LCNEM】公式サイト