マルハニチロの歴史を深く振り返ればマルハの創業者である中部幾次郎が15歳(1880年)の時に祖父から鮮魚仲買運搬事業を引き継いだことから始まりますが、今のマルハニチロが誕生したのは2007年です。
2007年10月にマルハグループとニチロが経営統合・ニチロを完全子会社化することでマルハニチロHDが誕生しました。
マルハニチロの事業内容は以下の5つに分類されます。
- 水産資源事業…国内外での漁業・養殖・水産商事等
- 加工食品事業…冷凍食品・缶詰・魚肉ソーセージ等・ファインケミカルの製造と販売
- 食材流通事業…水産・畜産商材や業務用商材の製造・販売
- 物流事業…冷凍品・飼料等の保管及び輸配送等
- その他…不動産業等
2024年3月期時点での売上高は外食・CVS・デリカ・生協・介護施設等、様々な業態に対して食品を提供する「食材流通セグメント」が全体の6割を占めますが、営業利益ベースで見ると「加工食品セグメント」「食材流通セグメント」が事業の柱となっています。
出所:統合報告書2024水産業界大手にはニッスイ(1332)や東洋水産(2875)極洋(1301)が存在しますが、売上高で言えば唯一1兆円を超える国内最大手がマルハニチロです。
マルハニチロの強みは1990年より外国船の操業規制が強化されるニュージーランドで外資企業として唯一漁獲枠を保持していたり、南極海域ではオーストラリア経済水域の漁獲枠の7割を保有しています。
出所:マルハニチロまた強力な漁業アクセス権益を有しているだけでなく、養殖や買付規模も業界シェアがトップクラスとなっており、スケールメリットを最大限活かした経営ができているのがマルハニチロの特徴です。
食品流通に強みを持つマルハニチロは、台湾産枝豆でシェアトップを取るなど冷凍野菜や畜産事業にも販売チャネルと広げています。
今までは商品の調達までが主体でしたが、今後は調達から販売までを管轄していく計画があります。
なお2025年度1Q決算と直近4年間の実績は以下の通りです。
出所:マルハニチロ 食材流通セグメント 事業説明会マルハニチロの事業等のリスク
マルハニチロは世界各国から食材を届けるため「円安」「原油高」「原材料価格の高騰」「自然災害や感染症及び事故」「労働力と賃金コスト」に対して弱い傾向があります。
出所:マルハニチロ2022年以降円安が進む事業環境において、以下2025年1Qの決算短信にて何度も「円安による減益」が報告さえています。
【食材流通事業】
食材流通事業は、国内外にわたり水産物の調達・市場流通も含む販売ネットワークを持つ水産商事ユニット、多様な業態に対して水産商材や業務用商材の製造・販売を行う食材流通ユニット、国内外の畜産物及び農産物を取り扱う農畜産ユニットから構成され、グループにおける原料調達力、商品開発力、加工技術力を結集して業態ニーズにお応えする商品を提案し、収益の確保に努めました。
水産商事ユニットは、昨年度苦戦した冷凍マグロの市況は回復傾向にあるものの、その他魚種の円安に伴うコスト上昇や一部魚種の取扱数量減により減収減益となりました。
食材流通ユニットは、グループ内の連携を強化し、市場の変化に合わせた業態ニーズを把握し販路拡大に努めたことにより増収となりました。一方で、業務効率の改善及び工場の生産性向上に努めましたが、円安の進行・原材料価格の上昇等によるコストの増加を補うことができず、減益となりました。
農畜産ユニットは、欧州からの輸入豚肉取扱減により減収も、円安進行等によるコスト上昇分を売価へ反映し増益となりました。
以上の結果、食材流通事業の売上高は155,072百万円(前年同期比0.9%減)、営業利益は3,798百万円(前年同期比10.4%減)となりました。
2024年6月には160円まで円安が進んだ後、9月には139円まで円高傾向に進み、その後10月現在では153円までまた円安が加速している状況です。今後また160円付近までドル円相場が動くことがあればマルハニチロが抱えるコストが増えますが、2022年以降の業績(営業利益)を見ると、うまく価格に反映させることで過去最高益を達成し続けてくれる期待もあります。
過去の売上と営業利益は以下の通り(今年も過去最高益を達成予定)です。
出所:IRBANK食品流通に強みを持つマルハニチロですが、商品ポートフォリオを拡大してきた一方で管理費も膨れ上がってしまったことが課題として挙げられますが、今後2028年までに毎年10%ずつ商品数を削減、注力カテゴリとチャネルの選択と集中により効率化を推進していく狙いがあります。
出所:マルハニチロ 食材流通セグメント 事業説明会マルハニチロの主軸でもある食品加工事業において、特に冷凍食品においては「味の素」「テーブルマーク(JT)」「ニチレイ」などの競合他社が強い傾向にあります。2025年1Q決算では価格改定による売上アップが報告されていますが、同時に北米向けのペットフード事業が好調に推移しているとあるので、冷凍食品以外のでの強いチャネル開拓に期待が膨らみます。
出所:マルハニチロ 2025年3月期 第1四半期決算短信補足資料マルハニチロの株主還元
マルハニチロは2022年3月末を最後に株主優待制度を廃止、配当金重視へと転換しました。
配当に関しては2012年以降減配なく、配当性向30%以上を目指しています。
今期(2025年3月期)の配当は1株100円を予定しており、2024年10月24日終値で計算すると配当利回りは3.38%と高配当です。
10年間での増配率は3.3倍(30円→100円)です。
円高メリットとなる銘柄にも関わらず、超円安相場で過去最高益を更新し続ける高配当銘柄というのがマルハニチロの印象になります。
投資判断は自己責任でお願いします。
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