投資で含み損になった時に思い出すこと
最近S&P500への投資を始めた人から「含み損になったんだけど、どうすれば良い?」と聞かれました。
S&P500の価格推移を見ると、2021年末以降最高値を更新していません。
最近始めた人の中には含み損を抱えている人も少なくなさそうです。
その場では以下のように答えました。
今後は今よりも下がる可能性が十分あるし、下げに耐えられないのであれば耐えられるぐらいまで資産を売却する必要があるけど、後20年・30年と長期で続けることを忘れなければ資産を売却せず気長に育てていく方が理論的には勝ちやすいと思うよ。
この説明で納得してくれました。
おそらく今後も同じような質問をされることもあると思いますし、同じ境遇を感じている人も少なくはない気がします。
そんな時に思い出してほしいことが実は3つあります。
投資を始めた理由を思い出す
投資を始める理由は人それぞれかと思いますが、老後資金を貯めるために始めるなら長期で利益を出すことが重要です。今の利益よりご自身が65歳を迎えた時の利益を最大化させる必要があります。
逆に毎月のお小遣いを稼ぎたいなど、1ヶ月後や1年後の利益を最大化させる場合は短期的なトレード手法が有用です。短期的に伸びない投資先はすぐにでも損切りを繰り返していかなければいけません。
大切なのは、自分が投資を始めた理由と投資手法をブラさないことです。
投資で失敗する人の多くは途中で投資目的を変更したり、短期投資で状況が悪くなった時に長期投資に切り替えたりします。
これは投資をする上では悪手です。
冒頭の質問では長期投資をしている方でしたので、もう一度目的を思い出してもらうよう促しましたが、短期的な利益を気にして資産を売却すれば、おそらくは長期的な利益は資産売却をしなかった時と比べて少なくなっていたはずです。
損益計算を入念に行う
2つ目に重要なことは未来の利益を最大化させるために、自分のリスク許容度と将来の期待リターンを見直すことです。
仮の話ですが、インデックス投資を30年続けた時の期待リターンが+4,000万円とします。そのリターンを得るためには毎月5万円の出費を30年間続けることに加えて、途中で投資した資産が半減することにも耐えなければいけないとした場合、そのリスクを許容できるのかを十分に考える必要があります。
今後30年間において、生活費が枯渇する可能性が高かったり、結婚式や起業などやりたいことのために大きな出費が必要になるのであれば、上記のリスクは許容できないはずです。
ご自身やご家庭が許容できるリスクがどの程度までなのかを感情的な要素は省いて、入念に計算することが投資を続ける上では重要です。
リスクとリターンは比例しますので、決してリスクをゼロにしたり、無謀にリスクを取りすぎることは避けた方が賢明です。
コンコルド効果を払拭する
3つ目は損益計算をする時にも重要ですが、コンコルド効果を払拭することです。
コンコルド効果とは、「埋没費用効果 (sunk cost effect)」の別名であり、ある対象への金銭的・精神的・時間的投資をしつづけることが損失につながるとわかっているにもかかわらず、それまでの投資を惜しみ、投資がやめられない状態を指す。超音速旅客機コンコルドの商業的失敗を由来とする。
大き過ぎる資金を投資したり、毎日たくさん投資の勉強し続けていると、含み損を抱えた時に「自分の投資方法は間違っているはずがない!損を取り戻すまで今の方法で続けよう」と考えてしまいがちです。
人は過去の自分の行動を正当化させてしまうので、自分の間違いを認めることができず、投資判断を誤ってしまうことが多々あります。それがコンコルド効果によって促される投資の失敗例です。
似たような事例では、保有効果という認知バイアスが存在します。
投資のバイアスで知られる「保有効果」について4つのスライドで解説。投資を続けていると、知らずに沼にハマっていることありますよね。 pic.twitter.com/rLEv9scUav
— Gaz(ガズ)@週末はブログを読もう (@gazooblog) January 29, 2023
自分の投資目的や手法を思い出したり、損益計算をする際には、そもそも自分の過去の行動を正当化しやすいことを十分に理解した上で、判断する方が賢明です。
大事なのは過去を変えることではなく、今からの未来で得られる利益を最大化させること。そのために必要なことが「損切り」なのか、「ガチホ」なのかを冷静に見極めましょう。