なぜ日本人は投資をしないのか?

日本人が欧米に比べて投資に消極的な現状を知っている人は多くはありません。

米国では家計資産のうち現金の割合は2割以下(全資産が100万円とするならば、現金は20万円のみ。残りの80万円は保険や株式等に充てられます)です。

米国の家計資産の推移
出典:日本証券業協会

その結果として、1980年から2020年の40年間で米国の家計資産は15倍へと拡大しました。

対して、日本の家計資産の半分以上は預金となり、同じ期間での成長率は5倍という結果になっています。

日本の家計資産の推移
出典:日本証券業協会

このような現状がある中でも投資をしようと思う人は少なく、フィデリティの調査によれば、投資をしている人の割合は2010年から2020年までの間に6.5ptしか成長していません。

投資家比率
出典:fidelity

他の調査を見ても、日本の投資人口は2割・3割程度と言われますし、個人的な実感としては10人に1人もいない印象です。

なぜ日本人は投資をしないのか。

その理由は大きく3つあると思われます。

金融知識とお金がない

日本人が投資をしない理由の1つは、お金と知識が足りないこと。

優良な投資先でも100円から投資できることを考えれば、お金より金融知識がないことの方が深刻です。

先ほど米国では40年で家計資産が15倍になったと説明しましたが、仮に退職時に手元にある資産が1,000万円だった場合、40年前から投資を活用していれば手元の資産は3,000万円を超えていた可能性があるということです。

投資を選択しなかったことで2,000万円の資産を手放してしまったと考えれば、後悔しない人はいないはず。老後は労働収入を増やすことも難しくなってきますから、出来る限り投資を活用しない手はありません。

この事実をわかっていても(知識があっとしても)投資をしないという人は少ないと思います。だからこそ、まずは知識をつけて投資を正しく認識することができれば、日本人でも投資を始めることが簡単になります。

投資をするための知識は当ブログでも解説しておりますので、以下の記事などを参考にご覧ください。


本などで勉強することも有効ですので、おすすめの本を紹介した記事も掲載しておきます。


物価が上がらない日本

日本人が投資をしない理由の2つ目は、物価が上がってない(デフレ状態)ことだと思います。

日本の消費者物価指数は1990年代のバブル期以降、ほとんど上がっていません。

日本CPI
出典:労働政策研究・研修機構

物価が上がらないという国は世界的にも珍しく、銀行に預けている現預金の価値が一定であることを意味します。他の国では毎年2%程度も物価が上昇するため、10年前の100万円は82万円程度の価値しかありませんし、毎年3.7%(先月の日本の物価上昇率)ずつインフレが進めば、30万円の現金は20年後14万円に目減します。

インフレ率の計算


海外ではこのうようなことが昔から起こり続けているので、「現金をそのまま預けておくことは損である」という認識が根付いています。特にインフレ率が異常な国では金や仮想通貨などのへの投資が盛んです。日本は価値の高い法定通貨に恵まれている分だけ投資文化が根付かないキッカケもつくってしまっていると考えられます。

社会保障制度が充実

日本人が投資をしない理由の3つ目は、年金や健康保険、生活保護など恵まれた社会保障制度が存在することです。

投資が進んでいるとされている米国には州が保障する年金制度は一部でしかありませんし、医療保険も高く、長生きするためには個人で資産運用する他ありません。

どんなに食べれなくなったとしても最終的には国がなんとかしてくれるという日本人の期待感から個人の危機管理が薄れてしまった背景があるのではないかと思われます。

その証拠に最近話題となった老後2,000万円問題をキッカケとして、日本の年金制度が実質的に破綻している現状が国民にバレてくると、日本人の投資人口は徐々に上がってきました。

政府もそれを後押しするかのようにNISA制度を恒久化させるなどして、年金に代わる経済的保障を個人に委ねようとしていると思われます。

嫌な話かもしれませんが、人間危機を感じなければ用心もせず、年金や安い保険料がなくならなければ、真剣に資産運用のことを考えない状態に陥っていたということです。

まとめ

なぜ日本人は投資をしないのか?ということですが、私が考える理由は以下の3つです。

  • 金融知識とお金がない
  • 物価が上がらない
  • 社会保障制度が充実している

最近ではウクライナ戦争と米国の経済政策により日本の物価が高騰し、年金も徐々に破綻傾向にあるため、今後日本でも個人の資産運用は急速に進んでくると思われます。

つみたてNISAなどを使って投資をすることが「当たり前」となる日も近いはず。

ただ、願わくば日本の社会制度や古き良き良い文化がなくなる前に、資産運用が新しい文化として根付いてほしいと思います。