令和5年度税制改正大綱を読んでみた感想
今月16日に発表された「令和5年度税制改正大綱」では、非課税投資制度であるNISAの恒久化が注目されており、実際の決定内容について、私なりの所感を書いていこうと思います。
令和5年度税制改正大綱の内容には、NISA以外にも法人課税や消費課税などの内容が含まれますが、今回はNISAに関連する部分だけを取り上げますので、全体を読みたい方は以下の自民党HPよりご覧ください。
投資期間の恒久化
以下の文章にある通り、NISAの投資期間は5年および20年の投資期間が撤廃されることととなりました。
具体的には、若年期から高齢期に至るまで、長期・積立・分散投資による継続的な資産形成を行えるよう、非課税保有期間を無期限化するとともに、口座開設可能期間については期限を設けず、NISA制度を恒久的な措置とする。
NISA制度がスタートした背景などを考えると、NISAの非課税期間はイギリス同様に無期限化すると前から考えていたことなので、今回はホッと一安心です。
今から2年前のツイートを見返しても、同じようなことを言ってます。
つみたてNISAの非課税期間は
— Gaz(ガズ)@週末はブログを読もう (@gazooblog) September 20, 2020
当初から5年間延長されています。
私の予想では
最終的にイギリスと同じく
非課税期間は無期限になるはずです。
声を大にして言いたいのは
早く始めれば税金も有利になる
ということ。
つみたてNISAを始める
タイミングを狙うのは愚か。
少額からでもやった方が良い! pic.twitter.com/S9efrejTwn
無期限になることで、若い世代であればお金がなくても時間がある分だけ毎月千円でも投資を始められますし、年齢を重ねても老後資産の形成やインフレ回避策などのリスクヘッジとして投資を活用していく文化が育まれやすくなると思います。
投資上限の拡充
年間投資上限に関しても、以下の組み合わせで年間360万円まで拡充されることとなりました。
現行のつみたてNISAの水準(年間 40 万円)の3倍となる 120万円まで拡充する。加えて、企業の成長投資につながる家計から資本市場への資金の流れを一層強力に後押しする観点から、上場株式への投資が可能な現行の一般NISAの役割を引き継ぐ「成長投資枠」を設けることとし、「つみたて投資枠」との併用を可能とする。「成長投資枠」の年間投資上限額については、現行の一般NISAの水準(年間 120 万円)の2倍となる 240 万円まで拡充する。これにより、年間投資上限額の合計は 360 万円となり、英国ISA(約 335 万円)を上回る規模が実現する。
ただし、高所得者への優遇は受け入れられず、一生涯にわたる投資上限も設定されてます。
投資余力が大きい高所得者層に対する際限ない優遇とならないよう、年間投資上限額とは別に、一生涯にわたる非課税限度額を設定することとする。その総額については、老後等に備えた十分な資産形成を可能とする観点から、現行のつみたてNISAの水準(800 万円)から倍増以上となる 1,800 万円とする。また、「成長投資枠」については、その内数として現行の一般NISAの水準(600 万円)の2倍となる 1,200 万円とする。
富裕層課税や高所得者の税制を優遇しないことは、私自身はあまり良くは思っていません。米国の現政権も富裕層課税には積極的ですが、資本主義社会は富裕層が相場の主役であることが多く、彼らが投資に積極的になる程、株価は上がりやすくなることもあり、逆に消極的になるほど、株価は低迷しやすいと考えます。
高所得者を優遇することで結果として低所得者の金融所得向上につながる背景を考えれば、高所得者の足を引っ張る必要はないのかなと思います。
レバレッジは除外
新しいNISA制度では、投資対象から高レバレッジ投資信託を除外する方針です。
NISA制度は安定的な資産形成を目的とするものであることを踏まえ、「成長投資枠」について、高レバレッジ投資信託などの商品は投資対象から除外するとともに、金融機関が顧客に対して「成長投資枠」を活用した回転売買を無理に勧誘するような行為を規制するため、監督官庁において、監督指針を�改正し金融機関に対する監督及びモニタリングを強化する。
レバナスや日本株のベア3倍などが人気となっていたりしますが、そういう商品は長期投資向けではありませんので、投資初心者の無駄な損失を防ぐためには大賛成です。
金融庁も前からレバレッジETFには注意喚起を促していますが、レバレッジは基本手をつけない方が賢明です。
現行NISAは令和5年末で終了
現行の一般NISA及びつみたてNISAについては、令和5年末で買付を終了することとするが、非課税口座内にある商品については、新しい制度における非課税限度額の外枠で、現行の取扱いを継続する。
令和5年12月31日の買付終了後、非課税期間はいつまで延長されるのか気になります。2018年から始めた人は2037年までなのか、それとも前回延長された2042年までとなるのか、加えて、一般NISAのロールオーバーもおそらくは出来なくなると思いますが、この辺りの細かい調整が今後発表されることと思いますので、注視していきたいです。
別の項目でジュニアNISAはロールオーバーできないようなことが書かれているので、おそらく一般NISAのロールーオーバーも難しいかと思いました。
未成年者口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置(ジュニアNISA)について、非課税管理勘定が設けられた日の属する年の1月1日から5年を経過する日の翌日に設けられる継続管理勘定がある場合には、原則として当該非課税管理勘定に係る上場株式等は当該継続管理勘定に移管されることとする。この場合において、同日に当該上場株式等を当該継続管理勘定に移管しないときは、当該継続管理勘定を設けた未成年者口座が開設されている金融商品取引業者等の営業所の長に対し、その旨その他の事項を記 載した書類の提出(当該書類の提出に代えて行う電磁的方法による当該書類に記載すべき事項を記録した電磁的記録の提供を含む。)をしなければならないこととする。
まとめ
全体の所感で言えば、今回の税制改正はとても大きな意味があると思います。
前回では一般NISAが二階建てとなるなど、意味不明な設計となっていましたが、目的が見直されたことにより英国のISAに近いわかりやすい仕組みとなり、好印象です。
強いていうのであれば、NISAの投資枠が拡大されても投資額を増やせる人はそう多くはないと思われます。低所得者層であれば、投資資金の捻出が最も大きな課題となるので、NISAの拠出額に応じて、社会保険料や所得税を控除するiDeCoのような仕組みが導入されると「貯蓄から投資へ」資産をより一層動かしやすくなるはずです。