2022年は世界的なインフレ抑止による各国の金融引き締め政策やロシア・ウクライナ侵攻によるエネルギー価格高騰などにより各株価指数が大きく下落しています。
出典:Google Financeおそらく2023年以降も同じようなトレンドが長続きしそうですが、その後の上昇相場に向けて投資妙味がある銘柄を見極めていきたい投資家も多いはずです。今回は2020年のコロナショック以降でも大暴騰したテスラについて解説していきます。
テスラは何がすごい?
テスラの銘柄分析は他のブログや大手メディアでも散々取り上げられていますので、今回は私が考えるテスラの強みと弱みについてポイントを絞って解説をしていきます。
圧倒的な売り上げ成長
テスラの強みは世界的な半導体不足やコロナによる人材不足、工場の稼働が停止するなどの危機に襲われても順調に自動車を製造・販売できる供給能力と衰えない買い手需要です。
作れば売れてしまうテスラ車の生産を右肩上がりで増やしていくことにより、テスラの売り上げはこれまで綺麗な右肩上がりで成長してきました。
出典:macrotrends2019年9月期から2020年6月期までは生産台数を伸ばせなかったこと、自動車価格の値下げにより売上成長率は低迷しますが、ギガファクトリー(大規模な生産工場)の建設により毎年+50%に近い成長率を見せています。
名称 | 国 | 完成時期 |
ネバタ | 米国 | 2016年 |
ニューヨーク | 米国 | 2017年 |
上海 | 中国 | 2019年 |
ベルリン | ドイツ | 2022年 |
テキサス | 米国 | 2022年 |
1つの工場につき従業員が1万名を超えるほどの大規模工場を次々と建設しており、米国メディアによれば2021年の電気自動車販売台数はテスラが世界1位となっています。
出典:CleanTechnica今後も売上および利益成長率が前年比+50%を維持し続ければ、業績に乗じて株価上昇も期待することができます。
イーロンマスクの人気度
株価を押し上げる要因は業績だけでなく、人気度も株価上昇要因の1つとなります。銘柄の人気度はPER(株価収益率)として計算され、一般的には15倍を越えれば人気があると判断できますが、テスラのPERはコロナ以降で1,000倍以上まで上昇し、2022年9月26日終値時点ではPER56倍程度となっています。
このようなハイリスク・ハイリターンな状況を演出できるのは、テスラCEOであるイーロン・マスク氏の影響があると思われます。彼のTwitterフォロワー数は1億人超。
出典:Twitter彼が一度Bitcoinとツイートすれば仮想通貨の価格は上昇しますし、過去テスラ株が高すぎるとツイートしたことでテスラの株価を下落させたこともあれば、今年はTwitter買収などの話題で株価に影響を与えてしまうほどの人気ぶりです。
加えてイーロン・マスク氏は世界一の大富豪であるとともにスペースXやニューラリンクの創業者でもあり、ウクライナ戦争では自社のインターネット衛生スターリンクを提供するなどのスーパーヒーローでもあります。
Starlink service is now active in Ukraine. More terminals en route.
— Elon Musk (@elonmusk) February 26, 2022
ツイートのいいね数、RT数からも分かる通り、間違えなく人気者。良くも悪くもテスラ株はとても注目度が高い銘柄であると言えます。
ビジネスとしての可能性
テスラが人気化する要因として他に挙げられるのが、自動運転技術とバッテリー事業です。
将来テスラ車が人の補助を介さずに高速道路以外の一般道すらも完全自動で運転することができれば、タクシー業界は駆逐され、格安の配車サービス会社を展開することも可能となります。
テスラに搭載されるバッテリーの小型化や蓄電制御システムが進化すれば、車が住宅や会社の予備電源として使うことも出来ますし、貯めた電気を輸送する手段としても利用できるなど様々なビジネスの可能性が広がっていることがテスラの人気につながっています。
なお、日本でもテスラの住宅用バッテリー(Powerwall)は既に販売開始されており、家が小さな発電所として利用されるケースが今後普及しそうです。
Teslaを組み入れているETF
3つ目に紹介するテスラの強みは、テスラが組み入れられているETFが2022年9月時点で207件もあるということです。
運用資産が大きいETFを見ていくと上位5銘柄には全てテスラが1.8%以上の割合で組み入れられていますし、QQQやIVWでは4.9%とかなり高い組入比率となっています。
さらにテスラの組入比率が高いETFを見ていくと、2020年に話題となったARKKやFFNDなど「革新的なテクノロジーを持った企業」としての枠組みで捉えられたり、一般消費財セクター銘柄やクリーンエネルギー銘柄としても捉えられるのがテスラです。
クリーンエルギーETFとして有名なQCLNのテスラ組入比率は8.4%と高く、世界中で問題となっている気候変動対策としても注目されるなど、あらゆる角度から世界のニーズを満たしていく可能性のあることが理解できるはずです。
ETFを運用する投資家が増えるほど、そしてテスラの時価総額が大きくなるほどETFの組入銘柄として利用されるため、テスラの価値は今後も変動しやすくなります。
Tesla株を買うべきか
どんな銘柄にも当然のごとくデメリットがあるようにテスラ株でさえも脅威や弱みがあります。今後投資を検討される際は必ずテスラの弱い部分についても情報収集してみてください。
今回は私が思うテスラの弱みを3つ紹介したいと思います。
サプライチェーンの問題
テスラ株が今後上がるか否かは、テスラ自動車の生産台数および販売台数が最も重要な指標となりますが、その指標がマイナスになるとすれば「工場が稼働できない」「部品が足りない」「人材が足りない」「新しい工場の建設計画が遅れる」という問題です。
出典:macromicro世界の半導体不足はコロナ以降もリードタイム(納期)が全然解消されていません。2022年5月には上海工場(ギガファクトリー)がコロナのロックダウンで稼働できなくなるなど自然災害までもが脅威となり、今後も「ヒト・モノ・カネ」を調達し続けられるのか不透明な部分はあります。
インフレによる原価高騰
世界的なインフレによりリチウムやコバルトなどの原価も高騰しているため部材を仕入れるのも一苦労です。
出典:tradingeconomics原材料価格が上がればテスラの利益が圧迫され、計画を達成することが難しくなり、結果として業績不振や株価下落を引き起こしかねない状況となります。
さらに世界的危機の中でこれまでの成長率を維持しながら生産台数を増やし続けるのは全く簡単なことではありません。計画が下方修正される可能性など含めて、投資家がどのように業績を見通していくのか、決して軽くみてはならないと思います。
テスラ人気が高すぎる
最後の弱点はテスラ株が人気すぎるということです。
2021年11月をピークとして数えると、株価は30%以上割安になっているものPERは56倍もあり、過大評価され過ぎているという懸念は払拭できません。仮にテスラの人気がなくなるようなことが今後起きれば、記録的な大暴落となる可能性が高くなります。
そして株式投資の歴史を振り返れば、トレンドはいつかは終わります。
今でこそ世界時価総額ランキング1位の銘柄は「Apple社」ですが、2011年以前はエクソン・モービル(現在13位)やペトロチャイナ、GEなどが世界のトップを取っていた時代もあります。長期的なトレンドを見れば企業の浮き沈みは激しいため、今のテスラ人気がこのまま一生続くという楽観視は禁物です。