投資で重要視する2つの数字と1つの項目

先週末、マッキンゼーが発表したレポート「日本の営業生産性はなぜ低いのか」を見て、とても勉強になりました。


このレポートを読んで、企業へ投資をする際に見ておきたい数字と項目が見えてきましたので、今回はそれらを紹介していきます。


従業員あたりの売上

マッキンゼーの資料を見ると、日本企業では属人的な営業スタイルにより営業プロセスが明確さされていなかったり、営業職が営業以外の仕事に時間をかけすぎるなど、営業の生産性が低下している可能性が高いと指摘しています。

たしかに日報や社内稟議などに必要な資料作り、直接営業成績に紐付かない作業をしている営業マンは少なくないと思います。

さらには売上を上げられる営業マンが毎回同じ人だったり、配属先によって生産性が大きく差が開くことも珍しくはないと思います。

そのような内部事情を投資家が細かく把握することは不可能ですが、会社の従業員数と売上高は有価証券報告書に記載されていますので、毎年の従業員数と売上高の推移を見れば、従業員一人当たりの生産性が上がっているのか、横ばい、もしくは下がっているのかを把握する事ができます。

以下はトヨタ自動車の有価証券報告書です。

トヨタ自動車-有価証券報告書
出典:トヨタ自動車

仮に役割以外の仕事が多い企業であれば、仕事は効率化されず、一人当たりの売上は下がっていくと予想できますし、営業マンが営業に集中できる環境や効率的な営業プロセスが仕組み化されている企業であれば、新しい従業員が増えても即戦力化させることが可能です。

投資をする際は、従業員あたりの売上、および利益の推移に注目することも大切だと思います。


顧客数と解約率

次にマッキンゼーが指摘する営業効率の悪い原因として、新規成長領域へのリソース投下不足や既存顧客との対応に時間をかけすぎていることを指摘しています。

日本企業の多くは手厚い顧客対応が期待されており、企業としても「お客様第一主義」と掲げていることも多いと思います。しかし、そればかりでは会社に利益を生みにくい顧客に時間をかけすぎてしまったり、既存顧客に時間を使う分だけ新規のお客様を見つけにいくことが出来なくなってしまいます。

企業と顧客の間には上下関係ではなく、あくまで対等な取引関係であるべきだと私は思いますし、WinWInの関係が崩れてしまえば、企業が負債を抱えるか、顧客が不満を抱えなければいけなくなります。

健全な企業であるほど、顧客満足度と営業利益率のバランスを上手に保つ事ができるはずです。これらを指標で見るとすれば、私は有料会員数や取引件数などを表す顧客数の推移を見るべきだと思います。


たとえば、家計管理アプリとして有名な「マネーフォワードME」の利用者数を見れば、顧客の新規獲得がどのぐらい進んでいるか、一瞬で判断することができます。

マネーフォワード利用者数
出典:マネーフォワード

例えば企業の売上が右肩上がりだとしても新規顧客が増えたのか、もしくは既存顧客が今まで以上にお金を出すようになったのかを判断することは不可能です。

ですが、利用者数や顧客数の推移を見ることによって、新しい顧客獲得が増えているかどうかを確認することができます。

加えて、月額課金などのサービスを展開する企業であれば、解約率(チャーンレート)を開示する企業もあります。

マネーフォワード解約率
出典:マネーフォワード

解約率は顧客満足度を測る指標として有効ですので、このような数字が開示されている場合には把握しておくと良いと思います。


組織の役割と責任

最後3つ目は組織全体の役割分担です。

ベンチャーなど小さい会社であるほど従業員の責任範囲が大きく、組織図が固まっていないこともあると思いますが、売上規模が大きくなってもあるべき部署がなかったり、ガバナンスが効いてない企業は営業効率が悪くなりがちです。

半導体製造装置で有名な東京エレクトロンの組織図はものすごく細かく部門が分かれています。

東京エレク組織図
出典:東京エレクトロン

あまり煩雑になりすぎても問題かもしれませんが、東京エレクトロンのROE(自己資本利益率)は今期予想で40.23と高く、経営効率は相当良いと判断する事ができます。

注意したい点としては、子会社や海外支店などが多い場合ガバナンスが効きにくい傾向にあると思います。「本社では徹底されているルールがあっても、支店ではまったく運用されてない」というのは企業あるあるではないでしょうか。

また同じような部署が乱立していたり、第三者から見てわかりずらい組織図であれば注意した方が良いかもしれません。

最近では「DX(デジタルトランスフォーメーション)」というキーワードが流行るようにシステムの効率化を測るためのデジタル化を進めることも重要視されます。そのような部署があれば人よりもロボットやAIに任せる方が人的ミスを削減できたり、人件費などのコストカットにつながる部分も多いと思います。


まとめ

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

投資先企業を分析するにあたり重要だと考えた指標は以下の3つです。

【重要指標】
  • 従業員あたりの売上高推移
  • 顧客数の推移
  • 組織図

他にも重要な指標は沢山あると思いますが、投資先が見つかった場合はこの点も確認してみてはいかがでしょうか。