株式投資の世界では、「金利が上がると、株価が下がる」というのが定説として、広く認知されています。
この相関関係は相当な頻度で利用され、多くの投資家たちが意識していることです。
覚えておいて損はありませんので、一緒に勉強していきましょう。
金利とは
金利とは、債券の利回りのことです。
債券価格は「債券の販売価格」と「債券の利回り」の2種類の意味を持っていますが、主に株式市場では債券価格というと債券利回り(金利)を意識する投資家がほとんどです。
最も代表的な債券は国が発行する国債であり、中でも償還期間(投資元本が投資家へ返還される期間)が10年の国債です。
米国株投資において「金利」を意味するのは、米国の10年国債利回りを意味し、人によっては長期国債利回り、もしくは長期金利という言い方をします。

1970年以降の米国10年国債利回り(金利)の推移を見ると、1980年頃をピークにして金利が長期的に下がっている傾向がわかるはずです。
金利は下げると停滞した経済が息を吹き返して活発になる効果があり、上げると次の経済不況の時の貯金となり、経済の成長を引き締める効果もあります。
もう一度チャートを見返すと、米国は金利を下げて経済を支えてきた様子が伺えるはずです。
金利と株価の相関関係
ここからが本題となりますが、よく言われる定説「金利が上がると、株価が下がる」の仕組みについて説明をしていきます。
なぜ、金利が上がると株価が下がるのか。
その仕組みは以下の通りです。
【金利と株価の関係(金利→株価)】
- 1. 景気が好調となる
- 2. 中央銀行が金利を引き上げる
- 3. 企業の借入が抑制される
- 4. 企業は先行投資できず成長が鈍化
- 5. 相対的に株式の魅力が下がる
- 6. 株価が売られやすくなる
金利が上がると企業は返済の見通しが立たなくなり新規でお金を借りづらくなってしまいます。結果として、設備投資や従業員採用などが出来なくなり、将来の業績見通しが悪くなり、株価が売られやすくなります。
また歴史的にこのような流れが繰り返されているため、機関投資家が先読みして金利が上がった途端反射的に株式の売りが先行すると、その影響で売りが売りを読んで、株価が下がっていると分析することも出来ます。
今度は逆の流れで見ていきましょう。
【金利と株価の関係(株価→金利)】
- 1. 中央銀行が金利を引き下げる
- 2. 企業が借入しやすくなり、成長が加速
- 3. 企業の見通しが良くなる
- 4. 将来性のある企業の株価が上がる
株価は実体経済よりも先行して反応する特徴があり、景気が悪くなる前に株価が下落していることも珍しくありません。金利の引き下げが発表されると、景気後退途中でも下がり過ぎた株価がすぐに上昇する場合もあります。
実際コロナショック時では2019年12月31日にクラスター発生がWHOから報道された後、2020年3月に一気に金利が引き下がったと同時に株価は底を打って、5ヶ月後には株価がコロナ前の最高値を更新していました。それぐらい株価は実体経済よりも先に反応する特徴があり、金利が下がった時には上がりやすくなります。
過去のチャートで分析
では最後に過去の株価(S&P500)と金利(米国10年債券利回り)を見ていきましょう。

1980年以降、長期チャートを見ると、金利と株価は逆相関の関係にあります。
逆相関とは、一方の価格が上がる時にはもう一つの価格が下がる関係のこと。反対の動きをしているということです。

直近1年間の金利と株価を見ても、金利が上がっている時には株価は下がっていますし、株価が上がると金利が下がる関係は確認できるはずです。
定説を覆す
ただし、一投資家として皆様に伝えておきたいことがあります。
それは「金利と株価は逆相関の関係にはならないこともある」ということです。
先ほどの長期チャートで2000年から2010年頃までの期間を見ていただくと、2つの価格は相関関係に近い状態にあることが確認できるはずです。

それまでは金利が上がれば株価が下がり、株価が上がれば金利が下がる逆相関関係を続けていたのにも関わらず、株価の上昇タイミングが読みづらくなっています。
仮に金利が下がったタイミングで投資したとしても、その後報われない期間が最大10年間も続けば、投資に失敗し、含み損を抱えてしまう結果になりかねません。
金利と株価の定説を信じすぎると痛い目に遭ってしまう可能性があります。
定説はあくまでも定説として認識し、相場の感覚はリアルタイムで状況が変わっていくことを理解しておけば、今後の判断に役立つはずです。