投資先の離職率を重要視する投資家は少ないかもしれませんが、人は企業にとって重要な資産の1つです。

人の力が健全に回れば業績は右肩上がりを継続しやすく、優秀な人がやめてしまえば資産も将来の利益も離れてしまうと考えられるからです。

企業によっては新規採用や優秀な人材獲得のため、入社祝い金を出したり、相場よりも高額な報酬を支払うこともあります。ですが、長期的に人が集まらない、離職率が高い企業の場合は何かしらの問題(不正?パワハラ?)を抱えているかもしれません。

投資家もしくは転職者として企業を見る場合、騙されないような知識は必要不可欠です。


業種別の離職率ランキング

まずは業界別でどの程度の離職率があるのかを、厚生労働省の雇用動向調査を参考に数値を見ていきましょう。

産業別の離職状況


2021年1月から6月までの期間において、産業全体での離職率は8.1%

最も離職率が低い業界は金融業、複合サービス事業となり、運送(運輸・郵便)業や電気、水道、ガスなどのインフラ業、上記業種に含まれない「その他」においては離職率は去年上半期より1%以上改善されています。

対して、鉱業や学術研究に関わる仕事に関しては離職率が増加しており、最も離職率の高い業界は観光、飲食、教育、娯楽(生活関連サービス業)となりました。

コロナや緊急事態制限による営業時間の短縮などを受けて、業界全体が冷え込んでいるため、人の移動も当然の如く激しくなっているように思われます。

加えて、企業の利益率がそれほど高くないことも関係しているように思われます。

実際に皆様が務められている企業と比べると、業界全体の離職率は高い傾向にありますでしょうか?それとも低くなっていますでしょうか。

相場全体の感覚を掴むと、次の就職先や投資先など見えてくるものもあるはずです。


大手企業の離職率ランキング

次は東洋経済が発表した2019年度の離職者数が少ない大手企業(従業員1,000名以上)の中から、離職率の低い企業をピックアップし、2022年8月までの株価推移と一緒に見ていきましょう。

ちなみに同期間のTOPIXの騰落率は-1.86%、日経平均株価が-1.08%でした。


離職率の低い大手企業の株価騰落率(2022年1月〜8月)
企業名 離職率 株価騰落率
大同特殊鋼0.4%-7.16%
三井不動産0.6%24.06%
栗田工業0.8%3.65%
信越化学工業0.8%-16.68%
信越ポリマー0.9%22.59%
トクヤマ0.9%1.15%
三菱ガス化学0.9%2.73%
協和エクシオ0.9%-12.67%
商船三井1.0%23.13%
東京エレクトロン1.0%-32.67%

TOPIXを下回ったのは大同特殊鋼、信越化学工業、協和エクシオ、東京エレクトロンの4社。

上記以外の6社に関しては指数を上回り、中でも大きな飛躍を見せたのが三井不動産、商船三井、信越ポリマーの3社。

今回は離職率と株価の関係は証明できませんが、長期的に見た場合は因果関係があるのかもしれません。


株価成長する企業の離職率

次は2021年に最も株価が成長した企業の離職率を調べていきたいのですが、離職率のデータが取れないため、転職口コミサイトとして有名な転職会議とOpenWorkに投稿された2021年以降の退職理由の口コミ件数を集計して見ました。


2021年最も株価が成長した企業の退職口コミ件数
企業名 株価騰落率 口コミ件数
グローバルウェイ542%1件
FRONTEO436%12件
リミックスポイント378%0件
ユニバンス338%4件
東京機械製作所304%1件
INCLUSIVE299%3件
日本郵船264%10件
イーエムネットジャパン258%4件
ケイアイスター不動産253%18件
フォースタートアップス252%0件

2021年以降の口コミ投稿件数が10件を超えたケイアイスター不動産の従業員数は2,000人、日本郵船の従業員数は3.5万人と考えると、推測される離職率は他の企業と同等もしくは低いくらいだと思われます。

ただし、FRONTEOに関しては従業員数が200名弱なのに対して、口コミ件数が12件というのは若干多い気がします。

全体を見てみると、株価成長が著しい企業においても離職率が高いと言う傾向はなさそうです。むしろ人が定着しない企業では業績は伸びにくいのかなと想像してしまいます。


まとめ

業界と企業の離職率を調べて見ましたが、いかがでしたでしょうか。

今回の内容をまとめると、以下の通りです。

【今回のまとめ】
  • 金融業、複合サービス業界の離職率は低い
  • 離職率の高い業界は観光と飲食
  • 株価と離職率は短期的には関係なさそう
  • 株価が上がる銘柄に離職率の高い企業は少ない

今回この記事を書こうと思ったのは、業界相場よりも離職率の高い企業がGoogle広告にて「入社祝い金○○万円!」という広告を出していたのがキッカケとなります。

中にはそういう餌に騙されて入社してしまったり、離職率の高い企業に投資をしたことで業績の低迷、業界の低迷を見抜けなかったような事態に陥ってししまう場合もあるかと思います。

そうならないためには、気になる企業があれば、その企業の離職率にも注目してみるのも良いのではないでしょうか。