2022年7月に1ドル=139円まで上昇したドル円相場ですが、8月に入ると130円をつけ、円高傾向へ転換しました。

株式投資をされている方であれば「8月の円高」という言葉を聞いたことがあるはずです。これはアノマリーの1つとされていますが、なぜ円高が起こるのか。本記事で詳しく解説をしていきます。
アノマリーとは
アノマリー(Anomaly)とは、理論的に説明することは不可能ですが、経験的に観測できる規則性のことを言います。
年間を通して月毎のアノマリーが存在し、最も有名なのは「5月に株を売れ(セルインメイ)」です。株式市場は10月から4月までのパフォーマンスが5月から9月のパフォーマンスに比べて高い傾向にあり、今後もそうなる可能性があるとされています。
ただし、アノマリーは絶対ではありません。
あくまで過去そのような傾向が強く発生しており、今後も起こる可能性が高いかもしれないという話です。
各月ごとのアノマリーは以下の通りです。
月 | アノマリー |
1月 | 1月効果 |
2月 | 節分天井 |
3月 | 彼岸底 |
4月 | 新年度効果 |
5月 | Sell in May |
6月 | - |
7月 | 夏枯れ相場 |
8月 | 夏枯れ相場、円高 |
9月 | 彼岸底 |
10月 | ハロウィン効果 |
11月 | 株高 |
12月 | 節税売り |
8月が円高になる理由
1990年から2021年までの32年間において、各月の円高と円安になった回数を見ると、8月の円高率が高いことがわかります。

他の月の円高回数は13回〜18回なのに対して、8月だけが21回と多いことが確認できるはずです。
平均騰落率も-0.6%と比較的値動きも大きくなっています。

米国債の償還および利払
なぜ8月だけが円高になりやすいのか。その理由の1つ目は「米国債の償還と利払い」があるからと言われています。
8月は米国債が償還期限を迎えることにより、債券が現金化され、年2回の利払い(2月15日と8月15日)も実施されます。
米国以外の投資家はユーロや円などドル以外の通貨へ資産を現金化するため、ドル安円高相場になりやすいというのが1つの定説です。
またアノマリーを信じた投資家によって、大きなドル売り相場が生まれて、8月が円高傾向になりやすくなるということも考えられます。
金利の低下
2つ目の理由は米国債の償還や利払によって米国債への再投資も促されます。すると金利が下がりやすくなり、ドルを持つ意味が薄れるため、安全資産とされる円や他の資産に買いが入りやすくなります。
他にも「ヘッジファンドの換金売り」「夏季休暇シーズンは社債が発行されにくい」「夏枯れで需給が弱まる」など様々な円高とされる理由があります。
どの理由が有効かを測るのは難しいですが、様々な理由によって8月は円高傾向になることが多かったというのが事実です。