円安とは

円安とは、ドルやユーロなど他の通貨や資産に対して「円の価値が下がること」を意味します。

1ドル = 100円のドル円相場が1ドル = 200円になると、円の価値はドルに対して2分の1となり、円安が進んだと言えます。

【ドル円相場の例え】
  • 1ドル = 100円
     ↓円安が進む
  • 1ドル = 200円
     ↓円高が進む
  • 1ドル = 80円

1ドル=100円だったドル円相場が、1ドル=200円になった時に円の金額が上がってるから「円高では?」と考えるかもしれませんが、それは間違いです。


たとえば、1,000円札をドルに変える事を想像してみて下さい。

1ドル=100円の時に千円札をドルに変えると、10ドルを手にすることができます。

次に1ドル=200円の時に千円札をドルに変えると、今度は5ドルしか手にすることができません。

同じ千円をドルに変えたにも関わらず、ドル円相場(交換レート)が上がってしまうと、円の価値は相対的に下がってしまうんです。

なので、1ドルあたりの円相場が上がった時には「円安」が進んでいる状態。反対に1ドルあたりの円相場が下がっている時には円高が進んでいる状態を意味します。


円安のメリット

円安のメリットはドルやユーロなど海外の通貨を日本円に変える際、いつもより多く日本円を手にすることができるため、海外の方々が日本国内を旅行すれば、いつもより格安で買い物を楽しむことができます。

ビジネスで言えば、海外企業が日本の製品を購入するなど「輸出」において、日本製品を安く仕入れることができるため、日本製品の買い手が多くなったり、需要が増える可能性が高くなります。

日本で最も輸出額の大きい製品はトヨタやホンダなどが提供する「自動車」です。

その他10位までのランキングは以下の通りです。


日本の輸出品ランキング(2020年)
品目 輸出額
(億円)
割合
自動車95,79614.0%
半導体等電子部品41,5536.1%
自動車の部分品29,1244.3%
鉄鋼25,7373.8%
半導体等製造装置25,1723.7%
プラスチック24,1983.5%
原動機21,6923.2%
科学光学機器19,6802.9%
電気回路等の機器17,4102.5%
非鉄金属15,8952.3%
出典:財務省貿易統計より

自動車以外でも、半導体関連やプラスチックなどの製品が海外からの需要が高いため、これらの製品がさらに売れやすくなるのが、円安のメリットと言えます。


ちなみに、Nintendo Switchやポケットモンスターなどで有名な任天堂の海外売上比率は79.0%

海外売上比率の高い企業ほど、円安のメリットを受けることになります。

任天堂 株価
出典:Google Finance

3月22日時点での任天堂の株価は+13.77%に対して、TOPIXは-4.75%なので、大きくアウトパフォームしています。


円安のデメリット

円安のデメリットは、先ほどと反対のことが起こります。

日本人が海外旅行をするのには大きなお金が必要となり、輸入が多い企業にとっても不利になることです。

日本の輸入品目上位を見ると、以下の物が並びます。


日本の輸入品ランキング(2020年)
品目 輸入額
(億円)
割合
原粗油46,464 6.8%
液化天然ガス32,0514.7%
医薬品31,9734.7%
通信機28,5034.2%
衣類・同付属品27,2374.0%
半導体等電子部品25,0583.7%
電算機類(含周辺機器)24,0623.5%
非鉄金属17,2332.5%
科学光学機器17,1172.5%
石炭17,0762.5%
出典:財務省貿易統計より

日本はサウジアラビアやロシアのような油田や天然ガスなどの資源が豊富な国ではありません。

そのため、エネルギーの輸入比率が多く、原油、天然ガス、石炭などを輸入する事によって、企業や家庭に電気が供給されます。

電源別発受電電力量の推移
出典:電気事業連合会

日本は世界と比較すると、原子力発電の量が少なく、天然ガスでのエネルギー発電が多い国となります。

主要国の電源別発電電力量の構成比
出典:電気事業連合会

2022年2月よりロシアとウクライナの紛争により、原油や天然ガス、石炭の価格が急騰しました。

この影響に加えて円安が進行することにより、ガソリン価格だけでなく、家庭の電気量の値上げも避けられない状況です。


エネルギー自給率

日本のエネルギー自給率は世界と比べと、かなり低い水準です。

エネルギー自給率(2018年)
出典:経済産業省「主要国の一次エネルギー自給率比較(2018年)」

賛否両論はありますが、原子力発電を再稼働すれば、自給率は向上し、海外から原油や天然ガスを購入する費用を節約することができるため、日本経済にとってはプラスの影響が考えられます。

今後、円安や原油高などの状況が続けば、日本経済はどんどん貧しくなってしまうため、ガソリン税の減税など、政府の動向には注目していく必要があります。


貯金の価値が減る

もう1つ、円安のデメリットは銀行に貯金している「現預金」の価値が減ってしまうということも考えられます。

米国株投資など、海外の資産を持っているとわかりやすいかもしれません。


仮にドル円相場が1ドル = 100円から1ドル = 120円へ円安になったとします。

すると、今までは100ドルの米国株を購入するためには1万円で購入できたのが、1ドル=120円の相場になると、100ドルの米国株は+2,000円多く支払わないと購入ができません。

このように、円安が進むことによって、日本人が米国株を購入する際は買付能力が下がっていくことになります。


反対に、ドルやユーロなどの海外資産を多く持っている方は、円の価値が下がったとしても、海外資産の価値は下がらないので、円資産だけ持っている人よりも資産減少を抑えることができます。

この価値観がわかれば、円を持つことも大切ですが、資産はできる限り分散して保有する方が、長期的にみて資産を減らさずに守ることができると言えます。