子供への投資は60年で300倍

2000年にノーベル経済学賞を受賞されたジェームズ・ヘックマン教授による「ペリー幼稚園プロジェクト」では、5歳までの未就学児への教育投資がその後大きな影響を与えることを証明しました。

【ペリー幼稚園プロジェクト】
    3~4歳の未就学児123人を対象とし、うちランダムに選出された58名はペリー幼稚園の就学前教育を5年間(1962年~1967年)実施します。その後、被験者58名と非被験者65名を追跡調査することで幼児教育の効果を検証。
    本実験の就学前教育では、子供の自発的な遊びや想像力を促す授業など、午前の2.5時間を使ってレッスンをします。加えて、教師による週1回の家庭訪問(1.5時間)、親を対象とした少人数のグループミーティングを毎月実施するものです。
    追跡調査では、3歳から11歳までは毎年実施され、その後、14歳、15歳、19歳、27歳、40歳までの追跡調査が完了している。

40年間の追跡調査で明らかになったのは、6歳時点のIQや19歳時点の高校卒業率、27歳時点の持ち家率など、一貫してペリー幼稚園に通った子どもの方が通わなかった子どもに比べてスコアが高いという結果が出ました。

40歳時点での比較を見ると、以下の通りです(ペリー幼稚園の通ったグループをA、通わなかったグループをBとします)。


ペリー幼稚園プロジェクト40歳時点での比較
項目 Group A Group B
雇用率76%62%
男性の雇用70%50%
年収$20000以上60%40%
持ち家率37%28%
車保持82%60%
預金有無76%50%
子持ち率57%30%
家族との良好な関係75%64%
再婚率29%8%
危険ドラッグの利用率3%20%
大麻の使用経験48%71%
麻薬罪での逮捕経験14%34%
窃盗経験9%22%
暴行経験19%37%
暴力罪での逮捕経験32%48%
5回以上逮捕された経験36%55%

幼児教育によって雇用や年収レベルに差が出るだけでなく、危険ドラッグの利用率はペリー幼稚園に通った人がわずか3%だったのに対して、通わなかった人の利用率が20%というのは大きな差がでていると言えます。

国の利益は国民が収める税収の大きさだけでなく、犯罪や医療費などにかかる社会保障費の削減をすることも含まれます。

これらを総合的に判断した場合、ヘッグマン教授の推計では4歳の時に国が投資した100円は65歳になった時に6,000円〜3万円の価値になって社会に還元されることになります。


親への投資も必要

もう1つ教育への投資において、興味深いことは親への投資もまた重要であるという点です。

それは、母親が妊娠中にストレス過剰(コルチゾールという分泌ホルモンのレベルが高い状態)になるほど、生まれてくる子供の健康や学力に悪影響を及ぼすということです。

学歴の低い母親ほど、妊娠中のコルチゾールのレベルが高く、悪い世代間連鎖を形成する流れが続いてしまいます。

つまり、母親になるであろう女性へ教育的な投資を行うこと、妊娠中の母親をケアすることは、将来生まれてくる子供の健康や学力を守ることへの投資と考えることもできます。


今すぐ投資行動を

教育への投資に限らず、健康への投資も、株式市場への投資も、早期に実施するほどリターンが高くなります。

予防医療であれば、定期的な予防歯科は生涯医療費を1,600万円も抑えられる可能性があります。



株式投資であれば、長期的な資産形成を目指すほど、資産は大きくなりやすいです。

ここで説明すると長くなりますので、時間がある方は以下の記事をご覧ください。


繰り返しになりますが、「能力を伸ばす」「健康を維持する」「資産を増やす」という目的の投資は「時間」が味方し、投資効果を飛躍的に大きくしてくれます。

今後、スキルを身につけて稼げるようになりたい、いつまでも健康な体を維持したい、投資で資産の減少をなるべく抑えたいなどの目標がある方は、今すぐにでも行動を開始することをお勧めします。