投資の目標設定

投資を始めるキッカケは「資産を増やしたい」「稼げるようになりたい」と考えることだと思います。

そして、多くの方ができる限り早い期間で大きな資産を形成し「裕福に暮らしたい」「贅沢したい」と考えるかもしれませせんが、それは大きな間違えです。

投資は早く儲けようとするほど、失敗するリスクが増していきます。

【ウォーレン・バフェットの名言】
    ゆっくりお金持ちになるのは簡単(だけど、ゆっくりお金持ちになりたい人はいない)。

バフェット氏の言う通り、長期的な資産形成ほどリスクが低く、再現性が高い投資を実現できます。

ですが、私たちはどうしても早くお金持ちになりたがるので、その感情を抑えて投資に向き合うためには「長期的な目標設定」が必要不可欠です。

今回は計画的な投資を行うために、投資目標の立て方、利回り計算などを解説していきます。


投資目標の立て方

自分にあった投資目標を立てるためには、まず目標例を参考にするのが一番です。

今から紹介する目標設定の中で自分らしい目標があれば、それを参考にしながら計画を立てていきましょう。


早期退職を狙う

早期退職を理由に投資を始める人がいます。

それは2018年に米国でソフトエンジニアをしていたピーター氏が30代で仕事を早期退職し、資産運用だけでその後の生活費を賄う生活をブログで発信したことがキッカケです。

世界中に彼が推奨した「FIRE(早期退職)」ムーブメントが広がっています。

【FIREとは】
    Financial Independence Retire Earlyの略語。
    具体的には、年間生活費の25倍を超える資産を労働収入で稼いだ後、毎年4%ずつ資産を切り崩して生活費を賄う早期リタイア術を意味します。
    仕事から離れて資産運用だけで生活をすることから、「経済的自立」と謳われます。

2022年現在でも書店を覗けば、FIREに関する本がたくさん並んでいるはずです。



ただし、日本では労働収入だけで生活費25年分の資産を形成することは難易度が高過ぎるため、時短勤務や週2日、3日だけ働いたりするような「セミFIRE(セミリタイア)」というような考え方まで派生しています。

早期リタイアすることで仕事と距離を置き、家族や自分の趣味の時間を大切にしたいと考える人が資産運用を始めるケースは今は珍しくありません。


老後資金を作る

2019年6月「老後2,000万円問題」が話題になったように、今後年金だけでは老後生活の資金が不足します。

65歳までに老後資金を用意できない場合、残された選択肢は「65歳以降も働き続ける」しかありません。

今と同じ就職先で雇用が守られれば良いかもしれませんが、年齢を重ねれば生産性に応じて給料は抑えられたり、再就職が難しい、キツくて安い仕事にしか就くことができないなど、年齢が若い時に比べると労働条件は比較的厳しいものが想定されます。

そうであるなら、老後を迎える前に稼げる時に稼いでおくことが必要です。

稼ぐ方法は必ずしも労働だけではなく、資産運用も稼ぐ手段の1つです。

自分の力だけでなく「お金にも働いてもらう」という考え方は当たり前になりつつありますし、現在の給料を1.5倍や2倍に上げるより資産運用で稼ぐ方が効率的な場合が多いはずです。

今後の問題を先送りすることなく、20代や30代のうちから対策すれば、老後2,000万円問題はそう難しくありません(逆に年齢を重ねてしまった後で資産運用を開始しても手遅れになる場合があります)。

やらない手はないはずです。


投資で節約&節税する

株式投資で得られる利益の種類は主に4つあります。

【株式投資の利益】
  • 売却益
  • 配当金
  • 株主優待
  • 節税

あまり知られていませんが、投資によって本来支払うべき税金を減らすことができます。


有名なのはiDeCo(個人型確定拠出年金)という優遇税制を使って投資をすると、投資金額に応じて所得税や住民税の支払いを軽減することができます。

株主優待で生活必需品などをもらえる企業に投資をすれば、食費や生活費を節約することもできます。

配当を得られる企業に投資をすれば、配当収入で通信費や交通費を補填したり、大きくなれば家賃を払うこともできるようになります。

無駄な支払いを極力さけられれば、お金が貯まりやすく自由に使える分の給料も増えるはずです。

節約&節税を目的に投資を始めることも有効な手段の1つです。


緊急時の備え

お金を持つ目的は、何かを買いたいとか、裕福な暮らしがしたいだけじゃないですよね。

万が一、病気や事故、リストラなどで大きなお金が必要になる時もあります。

生命保険や医療保険などを払い続ける方もいますが、生活はずっと裕福であり続ける保証もなく、苦しい時も含めて保険代を一生払い続けるのは不安も残ります。

まとまったお金があれば、高額医療制度や医療費控除を利用することで万が一のリスクに対応することもできますし、高い医療保険や生命保険などを解約したり、料金を節約することにもなるはずです。

万が一の備えを作るため、無駄な保険料を払わないために投資を始めるということも有効です。


養育費の補填

子供から私立大学への進学や海外留学など、お金がかかる提案された場合、親なら選択肢をなるべく残しておきたいと考えるはずです。

子供の夢を親の経済的な状況で諦めさせてしまったり、奨学金などで学生のうちにローンを組ませてしまうのは、とても切ないからです。

大学授業料の推移
出典:garbagenews

1950年と2021年の国立大学の学費を比較すると、なんと155倍。

2000年と比較しても1.31倍となっています。

大学の学費は今後もどんどん上がっていくことが予想できますし、貯金だけで補填するのはかなり難しくもなります。

まとまった教育費を稼ぐためには、資産運用も利用していく方法が有効です。


投資の目標額

目標にする金額は先ほど紹介したような投資目的によっても大きくかわります。

先ほどの例を元にして考えると、目標額はおそらく以下のような金額にはなるはずです。

目的別の目標金額
目的 目標金額
早期リタイア7,500万円
老後資金3,000万円
節約&節税30万円 ~ 200万円
緊急時の備え300万円 〜 500万円
大学費用(1人分)500万円 ~ 1,270万円
親の介護費用500万円

早期リタイアや老後資金は生活レベルに応じて必要な金額は大分変わってくると思いますが、上記の金額程度は必要になるはず。

節約&節税を目的にする場合は、投資で稼がなくても目標達成することができますし、優待を狙った取引なら数十万円から数百万円あれば十分だと思います。


投資目標の計算

目標が決まれば、次は目標達成までの道のりを計算していきましょう。

投資は株価暴落のリスクを許容しつつ、長期的に継続する方が成功確率が高いことは有名です。

3年、5年などの短い期間より15年、30年などの長い期間で目標設定をするべきです。

仮に無理なく毎月投資できる金額が3万円だとして、20年後に目標3,000万円を達成させるために必要な年間の平均利回りはどのくらいなのか。

それを知るために、投資金額と目標に応じた必要利回りを計算してみました。

20年で目標達成するための必要利回り
投資額 500万円 1千万円 3千万円 7.5千万円
1万円6.9%12.7%21.6%28.8%
3万円-3.2%12.7%20.1%
5万円--8.5%16.0%
10万円--2.2%10.3%
20万円---4.3%
30万円---0.5%

毎月3万円投資で3,000万円(税引前)の目標資産を達成させるために必要な年間の平均利回りは、12.7%となります。

正直、20年間の平均利回りを10%以上に保つのは至難の業です。

というか、ほぼ不可能です。

偶然が重なれば達成できるかもしれませんが、20年連続となると、相当難しくなります。

20年で3,000万円の資産を作るなら、最低毎月5万円は投資したいところです。

毎月10万円であれば、よほど変な投資先にさえ資金を投じなければ達成可能だと思います(といっても確実にということではありません)。


また20年後に早期退職(目標7,500万円)を目指すなら、毎月の投資金額は20万円以上が妥当となるはずです。


投資目標の利回り相場

先ほど20年連続の年間平均利回りを10%以上に保つのは難しいと言いましたが、なぜ難しいのか。

その参考となるデータを紹介します。

株式市場の大半は米国株式ですが、そんな米国株を代表する株式指数S&P500の年間リターン(Annual Change)をまとめたのが、以下のグラフです。

S&P500 annual returns


期間は1928年から2021年までとなります。

約93年間の年間平均リターンは7.98%

「93年間も投資できるわけない!」というツッコミが入ると思いますので、1928年から2021年までの間で連続した40年間の平均値をとると、年間平均リターンは8.26%に上がります。

これは過去93年間の歴史の中で、93年間ずっと投資し続けるよりも40年間で切り上げた方が年間の平均リターンは高かったということを意味します(今後そうなるというわけではないので要注意です)。

ちなみに最も成績がよかったのは、直近の1982年から2021年までの40年間でした。

年間平均リターンは10.82%

そして最も成績が悪かったのが1929年から1968年までの40年間で年間平均リターンは6.08%となります。


これらのデータを見て、株式指数S&P500でそのぐらいの成績が出るのであれば、GAFAやTesla、NVIDIAを買い続けていればもっと高い成績を出せるのではないか?自分が銘柄選定した方がもっと早く目標を達成できるかもしれないと考えるかもしれません。

そう思う方はインデックス投資の名著である「敗者のゲーム」や「ウォール街のランダム・ウォーカー」を読み込む必要があります。


S&P500などの市場平均に勝てるのは、投資のプロと呼ばれるファンドマネージャーでもたった2%です。

98%は市場平均に負けてしまう世界なので、決して安易に市場平均以上の成績を狙うことはおすすめしません。

逆に投資素人が20年間の平均リターン6%も出せるのであれば、それは優秀すぎると考えるべきです。