皆さん、こんにちは。Gazです。

岸田内閣発足後、金融所得課税を実行するべきか否かについてSNSや各経済メディアでも賑わっています。


株式投資をされている方であれば、かなり敏感に反応するところだと思いますが、これから投資しようと考えている方、もしくは投資にまだ興味を持ってていない方からすると何のことやらと思いますので、今回は金融所得課税がどのような効果をもたらすのかについて解説していこうと思います。

国の政策について詳しく知ることによって、国が豊かになるのかどうかを見通すこともできると思いますので、ぜひ最後まで見ていただけると嬉しいです。


金融所得課税とは

まずは「金融所得課税」について説明していきます。

金融所得課税とは、株式投資で株を売った時に出る利益(譲渡益もしくは売却益とも言います)にかけられる税金、株を持っているだけで得られる利益(配当益)にかけられる税金のことを意味します。

日本ではこれらの税金は利益の金額に関わらず、20.315%と決まっています。

たとえば100万円の利益が出たら、203,150円の税金を支払わなければいけませんし、1億円の利益が出た場合も利益額の20%に当たる2,031,500円の税金を国に支払う決まりになってます。

投資をされたことがない方からすると、株式投資で税金がかかる実感が湧かないかもしれませんし、売却益や配当益と言われても「そんなものがあるだ?」という感覚だと思います。

ですが株式投資も会社員やアルバイトと一緒で「お金を稼ぐ行為」です。国内でお金を稼いだ場合にはほぼ例外なく「税金」がかかります。

金融所得課税とは、投資家が株式で利益を上げた時にかかる税金のことを意味します。


引き上げはいつから?

今回、岸田内閣で議論されている「金融所得課税の見直し」というは、約20%となっている税率をもっと高く引き上げようという議論です。

2021年10月7日時点では、金融所得課税の見直しについて多くのことが決まっていません。

  • 引き上げ時期
  • 引き上げ後の税率
  • 一律で税率が増えるのか
    (累進性を加えるのか)
  • 恒久的に続けるのか

2021年10月7日Bloombergのインタビューでは山本幸三衆院議員は「25%程度への引き上げが適当」だと答えたそうです。

金融所得課税の見直しの具体的な内容について知りたい場合は、経済ニュースを追っていく必要がありますので、日経新聞やブルームバーグなどの経済メディアをチェックしていきましょう。


SNSでの反応

ここからは反響が大きいツイートを取り上げています。

日本株を最も多く売買しているのは海外勢です。

日本取引所グループ(JPX)が発表する投資部門別株式保有比率の推移を見れば、2020年の海外法人等の保有比率は30.2%です。

投資部門別株式保有比率
参照元:日本取引所グループ

海外投資家は米国、中国、インドなど様々な国への投資選択肢を持っている中で日本への投資を選択しているわけですが、税率が上がる場合は運用資産が大きい彼らの負担が大きくなるわけです。

投資家の中でも海外投資比率の高い日本株を持っている方も多いと思いますが、そういう株が売られてしまうと回り回って日本人投資家にも大きなダメージを受けることになり、日本の株式市場が冷え込む可能性は十分にあります。

日本の一般会計(わかりやすく言えば1年間の国の生活費、国家予算)は100兆円と言われています。

仮に金融所得課税で3,000億円(全体の0.3%)増えたとしても一般会計を考えればあんまり効果がなさそうですね。

むしろそれで効果があるなら特別会計で増やせば良かった話ですし、そもそもの税金の使い方に問題があるということ。

株価や物価、GDPが下がっているうちは消費税、所得税などの税率は下げた方が経済が回りやすくなるというのは皆さんもご存知の通りだと思います。

2019年に経験した消費増税の経験を踏まえれば、経済が上向きになる前での増税は反対ですよね。


金融所得課税は愚策なのか

今回の金融所得課税の引き上げについて私が思うことは「短期的な戦略過ぎて長期的にはデメリットが大き過ぎる!!」ということです。

金融所得課税の引き上げると、以下のようなことが起こる可能性が高くなります。

  • 海外投資家の投資資金は他の国に流出する
  • 日本以外で資金調達する企業が増える
  • 優秀な人材が日本に来なくなる
  • 日本企業が海外投資から出資されにくくなる

なぜこんなことが起こるかを例え話で説明していきます。


優秀な人材はどこに集まる?

これは極端な話かもしれませんが、仮にあなたが大学3年生(就活生)だとして最終的に内定をもらった会社が2社ある状況を想像してみて下さい。

両社とも職種、基本給の条件は同一とさせて頂きます。唯一違う点はインセンティブの有無です。

1社目はインセンティブ制度がないため、目標を達成状況に関わらず同じ給料が全員に支払われます。

対して2社目はインセンティブ制度を導入しており、目標の達成状況に合わせて毎月基本給 + 歩合給が振り込まれる仕組みです。年功序列制度がなく完全実力主義の世界です。

この選択肢がある場合、あなたならどちらを選びますかという問題です。

おそらく能力が高い人ほど、成果を出せる人ほど2社目の会社を選ぶはずです。同じ時間働いていても2社目の方が圧倒的に稼げるし、優秀な仲間が多くなるので、切磋琢磨しながら自分の稼ぐ手法を磨くこともできるはずです。

稼げる仕組みを持った企業や優秀な人材は環境の良い国や企業に集まります。GoogleやNetflixなど米国の一流企業に優秀な人材が多いのはそういう理由です。


税率を下げて税収を上げる

金融所得課税を20%から25%や30%と上げていった時に一時的に税収は増えるかもしれません。

ですが、消費税や所得税の税率を上げるような施策を繰り返していくと国民の収入は疲弊し、海外の企業が日本への進出を後回しにしたり、海外投資家が出資を諦めるなどして日本にお金が集まらないようになっていきます。

実際に財務省が作成したデータでは、タックスヘイブン(低税率 or 無税な国)への投資額は長期的に上昇傾向にあります。

タックスヘイブンへの投資
参照元:財務省財務総合政策研究所

上記におけるタックスヘイブンとは、アイルランド、ルクセンブルグ、オランダ、スイス、バミューダ、香港特別行政区、シンガポール、英領バージン諸島、ケイマン諸島、バルベイドスを指します。

これらの国々に関連している企業の方がそうでない企業に比べて、税引前の利益だけ見ても成長率が高いこともわかっています。

タックスヘイブン関連会社の利益
参照元:財務省財務総合政策研究所

GAFAMなどの世界ランク上位の企業を見れば明らかですが、優秀な企業ほど無駄な税金を回避しようとします。

ただし、それらの優秀な企業から1%でも税金を徴収することができれば日本の中小企業が数百社から税金を回収するより大きな税収が期待できます。

逆説的ですが無理に税率を上げるより企業を招致できるほどに税率を下げた方が、高い税収が期待できるはずです。