原油高で利益減少
ロシアのウクライナ侵攻によって原油価格、小麦などの物価が高騰しています。
出典:TradingView2020年3月の最も安かった時と比べると原油価格は5倍以上となり、ガソリン価格や電気代が上がり過ぎて生活を苦しめるほどです。
また米国の消費者物価指数(CPI)を見ると、2022年3月では前年比+8.5%を記録しており、コロナ後から急激に物の価格が釣り上がっている状態です。
出典:米国労働統計局高インフレは株価も下げる
急激な原油高は船や空港貨物の輸送代金も上昇させて、あらゆる物の価値が上がります。
物価が上昇するほど、企業の仕入れコストが上昇して利益が圧迫されるため、株価は上がりにくくなります。
そして、株価が下がって困るのは私たち投資家です。
企業のインフレ対策
高インフレが続く中で企業が利益を上げ続けるためには、以下のような施策が必要となります。
【インフレ時の打ち手】
- 商品価格を値上げする
- コストを下げる
- 沢山売る
- 物価が下がるまで耐える
単純な話ですが企業が商品価格を上げれば、利益は圧迫されません。
ですが商品価格を上げすぎると、今度は顧客が商品を買ってくれなくなったり、業績が下がってしまう心配もあります。
また販売管理費や仕入れコストを下げても利益は確保されますが、商品の質が下がってはリピーター減少につながってしまったり、従業員が離れていってしまう可能性もあります。
企業はあらゆる状況を考慮しながら、利益を稼がなければいけません。
ただし、インフレしている逆境の中でも利益額を上げれる企業があるなら、それは投資家にとって魅力的に見えます。
その理由は”急激な物価上昇はいつか落ち着くから”です。
物価が下がれば仕入れコストが下がるため「物価下落率 = 利益の上昇率」という構造が生まれます。
企業は物価が下がった分だけ利益を獲得し、増配や設備投資をしやすい状況ができるからです。
S&P500銘柄は大丈夫?
投資先としても人気なS&P500の上位銘柄はインフレ中でも「値上げ」「コスト削減」「売上UP」などの対策を取りながら利益額を上げているのでしょうか。
それらを確認するために、銘柄ごとのEPS成長率を見ていきましょう。
【EPSとは】
一株あたり純利益を表す指数。企業の利益額が上がるほどEPSは上昇し、企業の利益が下がったり、発行株式数が増えるとEPSは減少します。
S&P500に組み入れられている時価総額が高いTOP15銘柄における、直近1年間のEPS成長率は以下の通りです。
※数値はFinvizから参照しており、時価総額の単位はBillion Dollarです。EVを売りまくるテスラ
直近1年間で最も利益を伸ばしたのは、イーロン・マスク氏率いるテスラです。
2019年前半までは赤字だったテスラですが、2021年末時点での年間売上成長率は+70%です。四半期ベースで見ても+64%と半導体や金属などサブライチェーンの問題がある中で驚異的な売上成長ができるのは見事としか言いようがありません。
エクソンモービル
直近1年間で2番目に利益を伸ばしたのは、石油の探鉱、生産、輸送、精製、販売までの事業を一括で行う巨大エネルギー企業の1つエクソン・モービルです。
利益を伸ばせている原因が原油価格高騰によるものなので、1年後のEPS予想は-17%となっています。
原油価格は戦争が収束し、石油産出国の増産、ロシア産原油の取引が公に開始されれば、価格は以前のように落ち着くはず。
そうなればエクソンモービルだけでなく、シェブロンなど他の石油メジャーも利益率が圧迫されます。
「利益率が伸びている = 企業努力」というわけではなく、資源価格によって業績が大きく変わる銘柄もあります。
2022年3月以降に注目
S&P500に組み入れられている時価総額上位20銘柄を見ても、直近1年間のEPS成長率が0%以下の企業はありませんでした。
S&P500はGAFAMなどの巨大テックを筆頭にインフレが続く中でも利益を上げ続けています。
出典:multpl.com「S&P 500 Earnings」上記はS&P500全体のEPSを測った指標ですが、コロナ後以降も最高値を更新し続けています。
注意点としては、ロシアのウクライナ侵攻が2月後半から始まったことです。
EPSは2021年第四四半期(2021年12月末)までの成績しか加味されていませんので、3月以降の企業業績の変化がどうかわるかにも注目しておきたいと考えます。