コアサテライト戦略とは

コアサテライト戦略とは、運用する資産全体を「コア(中核)」と「サテライト(衛星)」という2つに分けて、資産運用のポートフォリオを考える投資戦略を意味します。


コア資産

コア資産として位置付けられるのは、リスクが比較的低く、長期的に安定して運用できる「守りの資産」を意味します。

【コア資産の例】
  • 現金、MMF
  • 高格付けの債券
  • 高配当ETF
  • 全世界株式のインデックスファンド
  • 分散されたバランスファンド

ただし、株式のインデックスファンドにおいては、短期的にはハイリスクな投資商品です。

20代、30代など若い方にとってのコア資産では条件を十分に満たしますが、60代、70代など運用期間が限られる投資家にとってはコア資産になり得ない場合もありますので、ご注意下さい。


サテライト資産

サテライト資産とは、コア資産に対してリスクが高く、少しの保有割合でもポートフォリオ全体のパフォーマンスを向上させてくれる可能性の高い「攻めの資産」を意味します。

【サテライト資産の例】
  • ハイパーグロース銘柄(個別株)
  • レバレッジETF
  • テーマ型投資信託やETF
  • アクティブファンド
  • IPO株
  • Bitcoin、ethereum

サテライト資産は場合によっては大きく下落することで、資産が驚くほど小さくなる可能性もあります。

ですが地球と月の体積を比べるように、保有割合がコア資産に比べて、サテライト資産が小さい規模であれば、ポートフォリオ全体の影響は小さく抑えられます。

サテライト資産は大化けすれば資産全体を底上げしてくれますが、失敗した時のリスクは最小限に抑えられるよう運用していく資産になります。


分散投資との違い

分散投資というのは、資産が減ってしまうリスクを抑えるために、資産配分を分けることを意味します。

為替リスクやカントリーリスクを避けるためには、米国株と日本株にそれぞれ投資をしたり、世界の国々に満遍なく投資をしていくことが分散投資のやり方です。


対して、コアサテライト戦略はリスクの高い資産とリスクが低い資産の両方に投資をする手法です。

コアサテライトも分散投資の1つとして考えられますが、どちらかというと少ない割合であってもリスクが高い資産を持つ分だけハイリスクになりやすい分散投資であると言えます。


ポートフォリオの比率を検証

一般的にコアサテライト戦略は「サテライト資産を3割以内に収めた方が良い」と主張される投資家が多いようです。

今回は私と一緒に最適なコアサテライト戦略の比率を調べていきましょう。

調べる条件は以下の通りです。


債券と株式の割合を検証

まずは比較的安全なポートフォリオとなるようにコア資産をAGG(米国債券ETF)、サテライト資産をSPY(S&P500に連動するETF)に設定した場合の運用パフォーマンスを見ていきましょう。

債券と株式の比率を10%ずつ変えていくと、運用結果は以下のようになります。


AGGとSPYのコアサテライト戦略の運用結果(2004年〜2022年2月末)
債券比率 CAGR 標準偏差 最大下落率
90%4.64%3.83%-7.05%
80%5.50%4.68%-9.73%
70%6.26%5.81%-13.87%
60%6.93%7.00%-19.96%
50%7.54%8.21%-25.75%
40%8.09%9.42%-31.25%
30%8.60%10.63%-36.49%
20%9.08%11.83%-41.48%
10%9.51%13.05%-46.25%

上記表にある3つの用語を説明します(わかる方は飛ばして結構です)。

【CAGRとは】
    CAGRとは、年平均成長率のこと。記載されている平均値は幾何平均となります。
    幾何平均とは、複利計算で用いられる方法で値の総和を n個で割るのでなく、値の総乗の n乗根を取る方法となります。

【標準偏差】
    標準偏差とは、データのばらつきを示す指標です。
    数字が大きいほど、株価が大きくズレる可能性が高いことを意味します。

【最大下落率】
    過去最も下落幅が大きかった期間の下落率を表示しています。

では、AGGとSPYのコアサテライト戦略の運用結果に戻ります。

過去18年間の運用結果において、AGG9割、SPYが1割のポートフォリオではCAGRは4.64%とまずまずの成績ですし、最大下落率も7%とかなり安定したコアサテライト戦略を実施できています。

対して、AGG1割、SPY9割のポートフォリオでは最大下落率が46.25%と資産が約半分にもなる時期があることがわかります。20代、30代であれば耐えられる可能性が高いですが、老後生活に突入されるような60代、70代の投資家にとっては到底受け入れ難い数字だと思います。

投資家の年齢や性格、家族構成などによって受け入れられるリスク許容度はそれぞれですが、最大下落率が7%から46%までの間で、「自分が受け入れられると予想できる割合以上にサテライト資産を増やしてはいけない」と考えるべきです。


S&P500とレバナスの割合を検証

次はS&P500とレバナスのコアサテライト戦略を検証していきます。

レバナスは運用期間が長いTQQQを採用してみました。


SPYとTQQQのコアサテライト戦略の運用結果(2011年~2022年2月末)
債券比率 CAGR 標準偏差 最大下落率
90%23.64%27.64%-35.00%
80%28.94%33.80%-40.59%
70%32.67%37.59%-43.47%
60%35.56%40.33%-45.23%
50%37.93% 42.48%-46.41%
40%39.96%44.28%-47.26%
30%41.72%45.84%-47.90%
20%43.28%47.24%-48.39%
10%44.69%48.52%-48.80%

さすがレバナスですね。

SPYとTQQQの相関係数(どちらも同じ値動きをする可能性)が高いので、上がる時は大きく上がり、下がる時は大きく下がるようなポートフォリオの完成です。

組み入れ比率10%であっても最大下落率は35%を超えてきます。

先ほどのAGG1割、SPY9割のポートフォリオで最大下落率が-46.25%でしたが、SPY6割とTQQQ4割での最大下落率も-45.23%と同程度の水準です。

両者のCAGRを比較すると、3.7倍(= 35.56% ÷ 9.51%)も差が生まれており、レバナスも非常に魅力的に感じてしまいますが、ハイテク株が今後10年以上成長し続けられるかを、十分に見極めないといけません。


まとめ

コアサテライト戦略を実行する上で、重要なことを以下にまとめてみました。

【コアサテライト戦略のまとめ】
  • インデックスファンドであってもサテライト比率を高め過ぎると、資産が半分になることがある
  • 高齢者ほど債券やMMFへの投資が必要
  • コアサテライト比率はリスク許容度次第
  • サテライト資産も冒険はNG

サテライト資産の比率には十分注意が必要です。

年平均成長率が6%と言われるようなインデックスファンドでも、サテライト比率を高め過ぎると、短期的にはリーマンショックのような景気後退に襲われ、資産価値が半分にまで下落する可能性があるからです。

年齢が若い人ほどインデックスファンドでの運用に可能性がありますが、高齢者やリスク許容度が低い投資家ほど株式よりも安定的な高格付けの債券や現金比率を高める工夫が必要です。


コア資産とサテライト資産の比率については、投資家それぞれのリスク許容度に起因します。

投資額、投資経験、年齢、家族構成など総合的な要素を加味した上で、どこまで資産が下落することを許容できるかを十分に検討するべきです。


今回の検証ではTQQQをサテライト資産にした場合、20%の投資比率でも資産の4割が減るリスクがありました。

これらの結果を考慮した上で、30%の下落も許容できないのであれば、サテライト資産を10%以上保有することは難しくなりますし、そもそもコア資産以外持ってはいけないという判断にもなるはずです。

リスク許容度の塩梅は今回試算した最大下落率を参考に個人で比率を決めていくと良いと思います。


最後に今回の検証ではAGG、SPY、TQQQとどれも資産が長期的に右肩上がりだった銘柄を選定していますが、今後の株価がどうなるかはわかりません。

もし株価が長期的に右肩下がりになり、最後まで株価が上向かなかった場合、投資が失敗に終わってしまいます。

投資はギャンブルではないですし、いくらサテライト資産だからといって、リスクをどこまでも取れるわけではありません。

大きなリターンが見込めるからと言って、無謀なIPO銘柄や政治的リスクもある新興国株など、やみくもに投資するのは絶対にやめましょう。

サテライト資産であっても、自分が確実に資産を増やしてくれると信じることができる銘柄だけに投資をすること、長期的に信じることができない銘柄には絶対に投資をしない覚悟が必要です。