PER(株価収益率)とは

PER(株価収益率)とは、企業の純利益に対して、株価が何倍の値段になっているかを表す株価指標(株価を分析するための数値)です。


PERは以下の計算式で求めることができます。

【PERの計算式】
    PER = 株価 ÷ 一株あたりの純利益(EPS)


2021年10月時点でのトヨタ自動車のPERを計算すると、以下のような式になります。

【トヨタ自動車のPERを計算】
    = 株価 ÷ 一株あたりの純利益(EPS)
    = 2,019.5円 ÷ 166.1円
    = 12.1倍

トヨタ自動車の株価は、企業が1年間で稼ぐ純利益の12倍と同じ金額にまで膨れ上がっていることを意味します。

【純利益とは】
    売上高から「売上原価」「販売管理費」「営業外費用」「特別損失」を差し引いた金額のこと。ここからさらに「税金」を引いたものを税引後当期純利益と言います。税引き前であれば、税引前純利益と記載されます。

低PER = 割安ではない

PERの計算式を理解することが出来れば、企業の利益が大きく、株価がそれほど高くない低PER銘柄へ投資をしたいと考えるかもしれません。



上記ツイートのように、同じ1万円で売られている株価でもPER5倍(1株あたりの純利益2,000円を出す)銘柄とPER20倍(1株あたりの純利益が500円しかない)銘柄では、PERの低い銘柄ほど「お買い得である」と考える投資家もいます。

ですが、この考え方は正しいようで、完璧とは言い切れません。


なぜ完璧とは言い切れないかというと、1株あたりの純利益(EPS)が500円しかないにも関わらず、株価はEPS2,000円の銘柄と同じ1万円で評価されているということは、株価が大きく評価されている理由があることが多いんです。

業績が急成長している会社であったり、配当をよく出しているなど、銘柄によって様々ですが、必ず何かの理由をキッカケにして株価が買われている状態になっていることは、株式市場ではよくあることです。

むしろ、理由もなく株価が上がる方が珍しいと思います。

逆も然りで、業績が良いにも関わらずPERが低い企業が投資家から放置されていることも、ほとんどありません。

ここまでの話をまとめると、以下の通りです。


【PERのまとめ】
  • PER = 人気度
  • 低PER = 割安とは限らない、何かしら安い理由がある
  • 高PER銘柄には人気の理由がある
  • 低PERで割安銘柄はあまりない


PERの目安

日本株であれば、PERの目安は「15倍」を基準に考えることが多く語られますが、実際の平均値を見ていくと、以下のようになります。


日本株の株価収益率(2022年2月時点)
区分 前期基準 予想
日経平均18.32倍13.76倍
JPX日経40017.26倍14.87倍
日経30019.35倍14.83倍
日経500平均20.18倍14.92倍
東証一部全銘柄20.27倍14.92倍
東証二部全銘柄28.79倍15.66倍
JASDAQ27.73倍17.73倍

表の右側にある通期予想で考えると、多くの市場で15倍付近になっていることがわかります。

日本の株式市場全体を考える場合は、15倍を基準にしても良いと思います。

しかしながら、PERは時期や業種によっても大きく変動するため、あくまでも市場平均と業種別を分けて勘がる必要があります。


業界のPER目安

業種別のPERはJPX(日本取引所グループ)のHPから確認することができます。


上記をクリックして、表計算ファイルを開くと各市場(東証一部、東証二部、マザーズ、JASDAQ)に上場している33業種の平均PERを確認することができます。

ここでは、平均PERの高い業種と低い業種について、ピックアップしていこうと思います。


PERの高い業種TOP10(日本株)
市場区分 業種 会社数 単純PER
マザーズサービス業134社163倍
JASDAQ機械40社141倍
東証二部石油・石炭2社116倍
東証一部サービス業224社113倍
マザーズ電気ガス1社80倍
東証一部繊維製品39社78倍
東証二部輸送用機器16社75倍
東証一部鉱業6社71倍
マザーズ電気機器7社70倍
JASDAQサービス業98社64倍

上記は2022年1月末時点でのデータとなります。

PERの高い業種では、弁護士ドットコムやセルソースなどが分類される東証マザーズのサービス業(134社)が圧倒的に高くなっています。

医療や士業などの既存産業とITを掛け合わせたDX関連企業が最近の投資テーマとしては、コロナ発生以降、非常に活況となっています。

ただし、2022年に入ってマザーズやジャスダックは「岸田ショック」などとも叫ばれるように急激な下落相場を迎えています。

東証マザーズ指数
出典:株探

マザーズ市場は2021年10月14日から2022年1月28日時点を比べると、下落幅は47.4%。

ほぼ半値に近いところまで下がっており、PERが高い銘柄ほど上昇する分だけ、下がりやすい傾向にあります。

JASDAQの機械では、半導体製造装置やロボット、自動車などに使われる部品関連の企業が名を連ねています。世界の半導体不足などの影響により活況となっているようです。

上記のような市場では、強いトレンドの影響を受けている可能性が強く、トレンドが下向きになるなど落ちる時は一瞬。

投資をする際には十分注意が必要です。


次は、PERの低い業種を見ていきます。


PERの低い業種TOP10(日本株)
市場区分 業種 会社数 単純PER
東証一部石油・石炭9社6.6倍
東証二部電気・ガス業2社8.1倍
東証二部建設業22社8.5倍
東証一部証券・先物22社9.0倍
JASDAQ建設業29社9.6倍
JASDAQパルプ・紙7社9.9倍
東証一部建設業98社10.1倍
東証一部銀行業78社10.2倍
JASDAQ不動産29社10.2倍
マザーズ輸送用機器2社10.3倍

東証一部、二部、JASDAQ市場それぞれ「建設業」がPERが低い業種として入るほか、石油・石炭、電気・ガスなどインフラ系の業種は投資先としての人気は高くありません。

ディフェンシブ銘柄といって、それなりの需要はあるものの、市場が大きく成長するわけでもなく、上記の業種以外でも海運や金属製品、水産、農林、保険などの業種は割と堅実な業績です。

低PERだから割安と判断できる銘柄は少なく、「一生割安株」の可能性もあるので、投資先を見つけるには、相当な体力が必要となります。


IT業界のPER目安

投資先のカテゴリに「IT業界」というものはありません。

就職活動などで使う「IT業界」ですが、代表的な銘柄で言えば、以下のような企業になると思います。


IT業界のPER目安
会社名 業種 PER
NTTデータ情報・通信業24.6倍
楽天グループサービス業赤字
富士通電気機器15.6倍
SCSK情報・通信業17.4倍
伊藤忠テクノソリューションズ情報・通信業21.2倍
サイボウズ情報・通信業126倍
Zホールディングス情報・通信業63倍

一応、参考までに。


余談ですが、PERの計算方法はズレることがあります。理由は以下の記事をご覧下さい。



米国株のPER目安

次は米国株のPERを見ていきましょう。

代表的な株価指数であるS&P500のPER(Price Earning Ratio)は1871年から2022年までで以下のように推移しています。

S&P500 pe ratio long chart
出典:longtermtrends

米国株の長い歴史を見れば、PERは10〜25倍の間に収まっていることが多いです。

最もPERが低かったのは1917年10月(PER = 5.81)で、最も高かったのがリーマンショック時で123倍を記録します。

リーマンショック以降のPER推移を見れば、コロナ以降の株価が企業の業績に比べて非常に高い状態にあり、2021年に入ると少しずつ株価と企業業績の差が縮まってきた経緯を確認することができます。

S&P500 pe ratio
出典:longtermtrends

ちなみに、日本株(東証一部)のPER推移を見ると、バブル期にPERが最高で614倍を記録しています。

東証一部PER推移


米国株PERランキング

最後は2022年2月時点でのPERが高い銘柄を確認します。

どのような銘柄に人気が集まっているのかを見ていきましょう。


高PER銘柄ランキング(米国株)
会社名 実績 予想
ServiceNow49676
Fidelity National Information Services32015
UDR319-
Tesla28990
Healthpeak Properties28331
Booking Holdings26426
Equinix15082
Vornado Realty Trust13746
Walt Disney Company12630
Tyler Technologies12056

上記はS&P500に組み入れられている銘柄で最も実績PERの高い銘柄です。

ServiceNowは企業の生産性を高めるための管理サービスをクラウドで提供する企業。実績PERは496倍と異常に高い数値を出していますが、予想PERでは76倍に抑えられます(それでも高すぎますが。。)。

Teslaなど成長性の高い企業ほど人気が高く、予想通りの実績を出し続けられれば、大きな株価成長が期待できますが、売られる時もとても早いです。

ディズニーはコロナで開演ができないことで企業利益が激減しますが、株は売られなかったので、PERが跳ね上がっています。多くの投資家がコロナ収束後に稼ぐ企業になることと、Disney+などの動画配信サービス(月額課金)に期待している様子です。


日本株PERランキング

日本株でも2022年2月時点でのPERが高い銘柄を確認していきます。


高PER銘柄ランキング(日本株)
会社名 EPS(円) PER(倍)
THE WHY HOW DO COMPANY0.03610
メドレー0.63326
アトラグループ0.11240
ニューラルポケット0.64180
共立メンテナンス2.56171
ハウテレビジョン1.55115
宮入バルブ製作所0.03115
カオナビ0.10109
堀田丸正2.27100
ランドビジネス0.0599

TOP10のうち、4銘柄がマザーズ市場に上場。

医療介護求人サイト「ジョブメドレー (人材プラットフォーム)」を展開するメドレーや人材マネジメントシステム「カオナビ」を展開するカオナビなど、人材系サービスに注目が集まっていると思います。

さすがにPERが100倍以上だと「買われすぎ」という印象ですが、それだけ業界としての注目度も高いということだったり、強いトレンドとして存在しているということです。