皆さん、こんにちは。Gazです。

今回は株式投資でもよく使われる「PER(株価収益率)の計算方法」について話をしてみようと思います。PERの計算を間違えてしまうと、実際は割安な銘柄にも関わらずPERが高いと判断してしまい投資機会を逃してしまうことあるかもしれません。

今回は計算方法によって投資判断を間違えてしまわないようににPERの計算方法について色々解説をしていこうと思いますので、どうぞ最後までご覧下さい。


PERの計算方法

PER(株価収益率)というのは企業の利益に対して、株価が何倍になっているかを表した指標になります。計算式に直すと以下のようになります。

【 PERの計算式 】
    PER = 株価 ÷ EPS(1株当たり当期純利益)
      ≒ 時価総額 ÷ 当期純利益

PERは株価をEPSで割って計算しても良いですし、時価総額を当期純利益で割って計算してもOKです。ただし、どちらの数字も全く同じ数字になるわけではありません。

たとえば、日本で通信事業を展開する「日本電信電話(NTT)」のPERを一緒に計算してみましょう。2021年5月17日(終値)時点での数字は以下の通りです。


【 NTTのPERを計算してみる 】
    PER = 株価 ÷ EPS(1株当たり当期純利益)
      = 2,851.0円 ÷ 299.6円
      = 9.51倍

    PER = 時価総額 ÷ 当期純利益
      = 11兆1211億円 ÷ 1兆850億円
      = 10.24倍

二つの数字は0.73(= 10.24倍 - 9.51倍)ほどの差があります。このように計算方法によって多少のズレがでてしまうことも理解しておくと、PERという数字をより正確に知ることができます。


なぜPERの数字がズレるのか

石積み

株価とEPSでPERを計算する場合と時価総額と当期純利益で計算する場合で最終的なPERの値が異なる理由は計算方法と会計基準の違いによるものです

    EPS = 普通株式に係る当期純利益 / 普通株式の期中平均株式数

一般的な会計基準ではEPSは上記の計算式によって求められます。普通株式とは株式市場で売買でき株主の権利について制限を受けない標準的な株式のことです。これに対して自社で株式を保有する自己株式(もしくは金庫株)という株式が存在します。EPSにはこれらの株式数は含まれないため、計算がズレる原因の1つになります。

また実際にNTTの当期純利益を総発行済み株式数(3,900,788,940株)で割ると、EPSは278.1円になってしまいますので、2022年3月期の予想する当期純利益は端数を切り落として切りの良い数字で見せていることも、PERがズレる要因の1つになっています。


EPSと当期純利益に注意する

PERを計算する際に株価と時価総額は基本的に前日の終値の数字を使うのが一般的です。むしろそれ以外に選択肢がありません。問題なのはEPSと当期純利益は”どの期間での数字を利用するか”ということになります。

【当期純利益の数字の使い方】
  • 前期の通期結果を採用する
  • 直近の四半期を採用する
  • 今期の通期予想を採用する

最もポピュラーなのは「今期の通期予想を採用する」パターンです。企業は決算発表と同時に次の本決算までの予想(ガイダンス)を発表します。ただし、中にはガイダンスを発表しない会社もありますので、その場合は「前期の通期結果」「直近の四半期」の数字を使ってEPSと当期純利益を計算していきます。

では、早速先ほど紹介した日本電信電話(NTT)のPERは今期の通期予想を採用しておりましたので、「前期の通期結果を採用する」と「直近の四半期を採用する」とのパターンでPERを計算してみましょう。

【 NTTのPERを計算してみる 】
    PER = 時価総額 ÷ 当期純利益(2021年3月期)
       = 11兆1,211億円 ÷ 9,161億円
       = 12.13倍

    PER = 時価総額 ÷ 当期純利益(直近の四半期)
      = 11兆1,211億円 ÷(850億円 × 4)
      = 32.70倍

前期(2021年3月)の当期純利益を採用すると今期の業績予想と比べて、1.89~2.62程度もPERが乖離しました。この差は今期の業績予想でだされた成長分を加味せずPERを計算した結果となります。基本的に企業は成長していくものですので、過去の数字になるほど株価が変わらなければPERを割高と評価してしまいます。

そしてもう1つ直近の四半期(2021年第4四半期)の数字を採用するとPERが全く違う数字である32倍になってしまいました。これはNTTが毎第四四半期に税金分を利益から引いて計算するので第1~3四半期に比べると純利益が大きく下がっているためです。季節要因があるのでこの方法でPERを算出するのはあまり得策ではありません。仮にやるとしても前年同期比の成長率を加味して当期純利益を算出するなど、もう少し複雑な計算をしないといけないので、この方法での算出は控えるべきです(ただし、PSRの計算や季節要因がほとんどない企業の計算ではとても効果を発揮します)。


まとめ

今回はPERの計算方法の違いで投資判断となる数字がズレてしまうことについて解説をしてきました。解説した内容をまとめると、特に以下の点について気をつけて頂ければと思います。

  • EPSと当期純利益どちらで計算したか
  • 採用期間(今期、来期、四半期)を確認
  • 端数処理でズレも発生する

上記の内容によりPERの値はズレてしまいます。そのことを知っているだけでもより正しく投資判断を行えると思いますので、ぜひ今後の投資に役立てて頂けると嬉しいです。